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        福娘童話集 > お薬童話 > お腹が痛いときに読む お薬童話 
         
        
       
ウサギのしっぽ 
アメリカの昔話 → アメリカの国情報 
      
       むかしむかし、ウサギがオオカミにいいました。 
「これからいっしょに、バターをつくってみないか?」 
「いいね。よし、いっしょにバターをつくろう」 
 それでさっそく、ウシたちからたくさんのミルクをもらってきました。 
 そしてそれをツボにいれ、グルグルかきまわしてかためると、バターのできあがりです。 
「さあ、さっそくこれをたべてみよう」 
 ウサギがそう言うと、オオカミが首をよこにふりました。 
「いやいや、これはさむい冬がきて食べ物が少なくなるときまで、だいじにしまっておこう」 
 そこでバターをいっぱい入れたツボを、森の中にうめておくことにしました。 
「こうしておいて、きみもぼくも冬になるまで、森の中のこのみちはとおらないというやくそくをしておこう」 
「うん、そうしよう」 
 ウサギとオオカミは、やくそくしました。 
 ところがくいしんぼうのウサギは、そのバターをたべてみたくてたまりません。 
「ああ、冬までまちきれないなあ。バターが食べたいなー。・・・そうだ。オオカミくんにはないしょで、ほんのちょっぴりなめてみよう」 
 それで自分だけ、そっと森の中へ入っていってツボをほりだし、中のバターを少し食べました。 
 さあ、そのバターのおいしいこと。 
 つぎの日になると、また食べたくなったので、 
「もう、ちょっぴりだけ」 
と、また森へ入っていきました。 
 そしてウサギが大いそぎで森の中からかけだしてくるところを、オオカミが見つけたのです。 
「ウサギくん。森の道は、とおらないというやくそくだよ」 
「ああ、その、それがね。じつは、森のむこうにいるねえさんが、かわいい男の赤ん坊をうんだというしらせをきいたので、はやく見にいきたくて、ついあの道をとおったのさ」 
「ふーん。それならいいけど」 
 ところがつぎの日もまた、オオカミは森の道をかけていくウサギを見かけましたので、 
「ウサギくん。きょうもやくそくをやぶったね」 
「ああ、ごめんごめん。おねえさんがね、こんどはかわいい女の子をうんだというので、見にいったのさ」 
「ふーん。それならいいけど」 
 そして二日たってまた、森からでてきたウサギをオオカミは見つけました。 
「おいおい、またやくそくをやぶったな!」 
「あっ、ごめん、おねえさんがね、かわいい三ばんめの赤ん坊をうんだのを見にいったのさ」 
「毎日毎日、赤ん坊がうまれるものか。ほんとうは、あのバターを食べに行っていたんだろう」 
「ウソじゃないよ。本当に赤ん坊が生まれたんだ」 
「よしそれなら、これからいっしょに森の中へしらべにいこう」 
 オオカミはそういって、ウサギを森へひっぱっていきました。 
 そして、うめてあったバターのツボをほりだして、ふたをあけようとしたので、ウサギはあわてて、 
「あいたた! おなかがいたくなった!」 
と、いって、パタパタにげていきました。 
 オオカミがふたをとってみますと、ツボの中はすっかりからっぽになっていました。 
「やっぱりだ! あのうそつきウサギめ!」 
 おこったオオカミは、ウサギをおいかけました。 
 そのときです。 
「ああ、たすけてーぇ!」 
と、さけぶ声がします。 
 オオカミが声のするほうへいきますと、草むらの中でウサギがバタバタとあばれていました。 
 あんまりあわててにげたので、うっかり人間が作ったワナにかかってしまったのです。 
 ワナに足をはさまれたウサギは、いっしょうけんめいさけびました。 
「たすけておくれよ! オオカミくん!」 
「いや、きみのようなウソつきは、もうぼくの友だちじゃないよ」 
「ああ、どうかゆるしておくれ。もう二度とあんなことはしないから」 
「ほんとうだね」 
「ほんとうだとも」 
 ウサギがないてあやまったので、オオカミはウサギをワナからたすけてやりました。 
 でも、このときしっぽだけがワナにきられてしまったのです。 
 その時からウサギのしっぽは、いまのように短くなったのです。 
      おしまい 
          
         
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