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4月17日の小話
身内のもの
   むかしのことでございます。
   お白州(しらす)といって、罪人(ざいにん)が裁判(さいばん)をうけるところがありました。
   あるとき、おおぜいの罪人たちが、お白州にならんで、おさばきをうけていると、罪人たちのあたりで、
  「ブウゥーーーッ!」
  と、大きなおならの音がしました。
  「いまの音は何の音だ。めし取ってまいれ」
  と、上役人が、下役人にいいつけました。
   おならの音だと知っている下役人は、こまってしまい、
  「それは・・・、その・・・、つかまえられませぬ」
  と、いいますと、上役人は目をつりあげて、
  「なに。目こぼしはゆるさん。ぜがひでも、めし取ってまいれ」
  と、いうきびしい命令です。
   こまった下役人は、しばらく考えておりましたが、つつと表へ走ってゆき、黄色いうんこを紙にのせてもどってきますと、うやうやしくさし出し、
「おそれながら、はんにんは、にげうせてしまいましたので、身内の者をめし取ってまいりました」
おしまい