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3月8日の小話
つらの皮
  「世の中で一番かたいものは、なんだろう?」
  と、若い者が、おおぜいではなしておりました。
  「それは、石だろう」
  と、ある男がいうと、
  「いいや、石は、くだくことができるぞ」
  と、うち消されました。
  「鉄じゃあ、ねえのか」
  「いいや、鉄は、けずったり、きざむことができるぜ」
   すると、中のひとりが、ひげづらの男を指さし、
  「おい、おまえのひげが、一番かたいぞ。鉄も、石も、かなわねえな」
  「なぜだい?」
   ひげづらがきくと、
「そいつはな、おまえの、鉄面皮(てつめんぴ→あつかましくて、ずうずうしい人のこと)といわれるほどの、あついつらの皮をつきやぶって、生えているんだからな」
おしまい