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最高の宝物
文・イラスト 龍之進  三絶堂

さいこう の たからもの

♪Reading in Japanese
ろうどく ことば工房



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 むかしむかし ある ところ に、たからもの を あつめる のが だいすき な おとこ が いました。

 おとこ は せかいじゅう を たびしてまわり、キラキラ ひかる ほうせき や、きん で できた ぞう や、うつくしい ぬの など を あつめていたのです。



 あるひ、たび の とちゅう で ひ が くれて しまった ので、

最高の宝物

 おとこ は ちかく に あった むら の ちいさな いえ に とめて もらう こと に なりました。

「なに も ありません が、どうぞ ゆっくり して いって ください」

最高の宝物

 その いえ に すんでいた せいねん は、そまつ な さら に いれた スープ を おとこ に さしだしました。

 おとこ は あいそわらい を しながら、こころ の なか で つぶやきました。

(ほんとう に なに も ない ところ だな。

 いえ は ボロボロ だし、この さら だって、まるで ガラクタ じゃないか)

最高の宝物

 おとこ は スープ を のみながら、じぶん が あつめた かずかず の たからもの の こと を、せいねん に じまん しはじめました。

 せいねん は だまって きいて いました が、やがて こんな こと を いいました。

最高の宝物

「この むら にも、すてきな たからもの が ありますよ」

「なんだって。ほんとうかい?」

「ええ、ほんとう です」

「ようし、それなら、その たからもの と やら を みせて もらおう じゃないか」

「わかりました。では、あす の ゆうがた まで まって ください」

 どうして あす の ゆうがた まで またなければ ならない のか、おとこ は ふしぎ に おもいました が、

 とにかく せいねん の いうとおり に する こと に しました。



 つぎ の ひ の ゆうがた、せいねん は おとこ を むら の はずれ に つれて いきました。

最高の宝物

 そこ には いえ も ほとんど なく、そら が ひろびろ と かんじられます。

 せいねん は、とおく に みえる やま の ほう を ゆびさしました。

「ほら、みて ください」

 せいねん の ゆびさす ほうがく を みた おとこ は、おもわず いき を のみました。

最高の宝物

 どこまで も ひろがる そら は、あかいろ や だいだい や きいろ や さまざま な いろ で みごと に そめられ、むらさきいろ や さくらいろ の くも が たなびいて いました。

 そして その なか に、くろぐろ と した やま の すがた が うかびあがって みえました。

 おとこ は しばらく、なにか いう のも わすれて、その けしき を みつめて いました。

最高の宝物

 やがて おとこ の め から、ひとすじ の なみだ が ながれおちました。

「どうでしたか。きれい だった でしょう」

 いえ に かえる みちすがら、せいねん は にっこり わらって おとこ に はなしかけました。

最高の宝物

 おとこ は、なに も いわず に うなずき ました。

 ゆうやけ が、あんな に いろいろな いろ を していた なんて。

 さくらいろ の くも が、ある なんて。

 やま が あんな に、おごそか な すがた を みせる なんて…。

「すてきな たからもの でしょう?」

 せいねん は、ふたたび おとこ に はなしかけました。

 おとこ は、せいねん の ほう を むき、こう こたえました。

「ああ。さいこう の たからもの だよ」

おしまい

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