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        イラスト myi   ブログ sorairoiro 
      アトリのかね 
      (イタリアのむかしばなし) 
      
       
      
      
 
         
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       むかしむかし、イタリア の アトリ と いう まち の おはなし です。
       
 
 
 あるひ、おうさま の めいれい で、まち の ひろば の とう に おおきな かね が つるされました。
 
 
 かね から は、ながい つな が さがっています。
 
 
「どんな おと が する の だろう?」
 
 
 まち の ひとたち は とう を とりかこん で、むね を わくわく させながら おうさま が くる のを まちました。 
        
               やがて ばしゃ で やって きた おうさま が、あつまった ひとびと に こう いい ました。  
         
        「この かね は、ただ じこく を しらせたり、おと を きく だけ の もの では ない。『ただしさ の かね』と して、ここ に つるした のじゃ」  
         
        「ただしさ の かね?」  
         
         ひとびと は、ふしぎ そう に おうさま を みつめました。  
         
        「そうじゃ、『ただしさ の かね』じゃ。  
         
         おまえたち の うち の だれ でも、もし ひと に いじめられたり、つらいめ に あわされたり したら、ここ へ きて かね を ならせば よい。  
         
         かね が なれば さいばんかん が すぐ に きて、おまえたち の いいぶん を きいて くれる。  
         
         そして なに が ただしいか を、きめて くれる で あろう」  
         
        「だれ が かね を ならして も、よろしい の ですか?」  
         
        「だれ が ならして も よい。  
         
         こども でも よいぞ。  
         
         みよ、その ため に つな は、この よう に ながく して あるのじゃ」  
        
               こうして アトリ の まち では、その ひ から ひと に つらいめ に あわされた ひと や、あらそいごと の ある ひと は とう の した に きて、かね を ならす よう に なりました。  
         
         そして おうさま の おっしゃった とおり かね が なる と さいばんかん が やってきて、だれ が ただしい か、なに が しんじつ か を きめて くれる の です。  
         
         かね の おかげ で まち の みんな は、たのしく まいにち を すごせる よう に なりました。  
         
         そして ながい ねんげつ の あいだ に おおぜい の ひと が つな を ひっぱった ので、つな が きれて あたらしい つな が できる まで ブドウ の つる が さげられる こと に なりました。  
         
         
         さて、アトリ の まちはずれ に、ひとり の かねもち の おとこ が すんで いました。  
        
               この おとこ は わかい ころ は ウマ に のって わるもの を たくさん やっつけた、いさましく ただしい ひと で した。  
         
         でも とし を とる に したがって、だんだん と いじわる の けちんぼう に なって しまったのです。  
         
         
         ある ひ、かねもち は かんがえ ました。  
         
        「もっと、おかね を ためる ほうほう は ない だろうか?  
         
         ・・・そうだ。ウマ に エサ を やらなければ いいんだ」  
         
         こうして むかし は いっしょ に かつやく した ウマ なのに、エサ を やる の を やめて しまった の です。  
        
               やせほそった ウマ は ヨロヨロ しながら、やっと アトリ の まち へ たどり つきました。  
        
               そして ひろば の とう の した まで くると、つな の かわり に さがって いた ブドウ の つる の は を ムシャムシャ たべはじめた の です。  
        
              ♪ガラン、ガラン。  
         
         ウマ が たべる たび に、かね が ガランガラン と なりました。  
         
         まち の ひとたち も さいばんかん も ひろば に とんできて、その ウマ を みました。  
         
        「かわいそうに、こんな に やせている」  
         
        「ウマ は くち が きけない から、かね を ならして、つらい こと を うったえて いるのだ」  
         
         すぐ に かいぬし だった かねもち が、ひろば に よばれ ました。  
        
               さいばんかん は、かねもち に いい ました。  
         
        「この ウマ は、いままで とても あなた の やく に たって きた はず。  
         
         あなた の ためた おかね の はんぶん は、この ウマ の もの では ありませんか?」  
         
         かねもち の おとこのひと は ブドウ の は を たべている ウマ を みている うち に、むね が いっぱい に なりました。  
         
         じぶん が どんな に ひどいこと を したか、ようやく わかった の です。  
         
         そして それから は ウマ を たいせつ に して、いつまで も なかよく くらし ました。  
        
               アトリ の かね は、ウマ に とっても 『ただしさ の かね』だった の です。  
              おしまい       
        
         
        
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