ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) > がいこくご > にほんむかしばなし

イラスト　小技のイラスト作品集　(C)KOWAZA

びんぼうがみ と ふくのかみ

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　むかしむかし、ある むら に、とても びんぼうな おとこ が いました。

　はたらきもの の おとこ ですが、いくら はたらいても くらし は ちっとも らく に なりません。

　それと いうのも、じつは おとこ の いえ には びんぼうがみ が すみついて いたからです。

　そんな おとこ に、むら の ひとたち が よめ の せわ を しました。

　この よめ は びじん な うえ に はたらきもの で、あさから ばんまで はたらきます。

「いい よめご だ。よし、わし も がんばるぞ！」

　おとこ は いぜん にも まして、はたらく ように なりました。

　そうなると、こまった のは びんぼうがみ です。

「なんと まあ、よう はたらく ふうふ じゃ。

　これでは、ここに いづらく なってきた のう。

　わしゃ、どうすれば いいんじゃろう？」

と、だんだん げんき が なくなって きました。



　それから なんねん か たった、あるとし の おおみそか。

　おとこ の いえ では、わずかながら も ごちそう を ようい して、ゆっくり と しょうがつ を むかえよう と いうとき。

「うぇ～ん、うぇ～ん」

　てんじょううら から、なきごえ が きこえて きます。

「おや？　だれ じゃろう？」

　おとこ が み に いくと、なんとも きたない みなり の おじいさん が ひとり、こえ を はりあげて ないて いました。

「あんたは、いったい だれ かね？」

「わしか？　わしゃ、びんぼうがみじゃ。

　ずっと むかし から この いえ に すんで おった のに、おまえら ふうふ が よう はたらくもんで、

　こんや、ふくのかみ が やってくる ちゅうんじゃ。

　そしたら わし は、でていかんと ならんのだ。

「うぇ～ん、うぇ～ん」

　おとこ は じぶん の いえ の まもりがみ が びんぼうがみ と きいて すこし ガッカリ しました が、それでも かみさま は かみさま です。

　した の へや に おりて もらって、よめ に わけ を はなしました。

　そして びんぼうがみ が かわいそう に なった おとこ は、つい こんなこと を いいました。

「せっかく、ながいこと おったんじゃ。これから も ずっと、ここに おって くだされ」

　すると、よめ も くち を そろえて。

「そうじゃ、そうじゃ。それが ええ」

　どこへ いっても きらわれもの の びんぼうがみ は はじめて やさしい ことば を かけられて、こんどは うれしなき です。

「うぇ～ん、うぇ～ん」

　こうしているうちに よ も ふけて、じょや の かね が なりはじめました。

　これが、かみさま の こうたい する あいず です。

　そのとき、

♪ トントントン

と、と を たたく おと が しました。

「こんな よふけ に、どなた ですじゃ？」

「ガッハハハハ。

　おまたせ、おまたせ。

　わし は かみ の くに から はるばる やってきた こうふく の つかい。

　だれも が わし を まちのぞむ

　ふくのかみだー！」

　ついに、ふくのかみ が やってきました。

　ふくのかみ は、びんぼうがみ に き が つくと、

「なんだ、うすぎたない やつ め、まだ おったんか。

　はよ でていかんと、ちからずく でも おいだすぞ！」

　だが、びんぼうがみ も まけて いません。

「なにお～っ！」

と、ふくのかみ に とっしん しました が、やせて ヒョロヒョロ の びんぼうがみ と、でっぷり と ふとった ふくのかみ では しょうぶ に なりません。

　それを みていた ふうふ は、

「あっ、あぶない！」

「びんぼうがみさま、まけるで ねえぞ！」

　それを きいて おどろいた のは、ふくのかみ です。

「なんで？　なんで、びんぼうがみ を おうえん するんじゃあ？」

　ふうふ は びんぼうがみ と いっしょ に、ふくのかみ を いえ の そと へ おしだします。

「わっせい！　わっせい！」

　とうとう さんにんがかり で、ふくのかみ を いえ の そと へ おしだして しまいました。

　おいだされた ふくのかみ は、あぜん、ぼうぜん。

「わし、ふくのかみよ。

　なかに いる のが、びんぼうがみ。

　びんぼうがみ は きらわれて、ふくのかみ は たいせつ に される はず なのに。

　これは いったい、どういうこと？」

　くび を ひねりながら、すごすごと ひきあげて いきました。

「やった、やった！」



　つぎのひ は、めでたい おしょうがつ です。

　びんぼうがみ も いっしょ に、おしょうがつ の おいわい を しました。



　それから と いうもの びんぼう の せいで、この いえ は あまり かねもち には なりません でした が、それでも げんき で しあわせ に くらした と いう こと です。

おしまい