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      第80話 
         
          
         
ウサギとハリネズミ 
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      ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
      
       
      投稿者 : 神栖星花研究所 「神栖星花研究所」 
       
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      制作: ユメの本棚 
      
       むかしむかしの、秋のある日曜日の朝のことです。 
 ハリネズミは、ウサギのすがたを見つけると、 
「おはよう」 
と、いいました。 
 しかしウサギは、せっかくハリネズミがあいさつをしたのにへんじもせず、ひどく見くだしたような顔つきをしながらいいました。 
「きみは、どういうわけで、こんなに朝はやくから、畑のなかをかけまわっているんだね」 
「ああ、散歩(さんぽ)ですよ」 
と、ハリネズミはいいました。 
「散歩だって?」 
と、ウサギはわらいました。 
「いくらきみの足だって、もっとましなことにつかえそうなものだと、ぼくは思うがね」 
 ハリネズミは、ひどく腹がたちました。 
 ほかのことならなんだってガマンするのですが、足のことをいわれてはガマンできません。 
 というのも、ハリネズミの足は生まれつきまがっていたからです。 
「なんだって?! じゃあ、きみの足ならもっと気のきいたことができるというのかい」 
「そりゃそうさ。なんたって、わたしの足はとってもはやくはしれるからね。・・・きみとちがってね」 
「じゃ、どっちがはやいかためしてみるがいいさ」 
「なんだい、足のまがったきみがわたしにかてるというのかい? おもしろい、そんなにやりたいんならやってみようじゃないか。でも、なにをかけるんだい?」 
「金貨一枚とブランデー(→お酒の一種)ひとビンだ」 
と、ハリネズミがいいました。 
「よし。じゃ、さっそくはじめよう」 
「いや、ぼくはまだ朝めしまえだ。これから家へかえって、ちょっと食ベてくる。三十分もしたら、またここにもどってくるよ」 
 ウサギが承知したので、ハリネズミはそういってたちさりました。 
 そして家に帰ると、おかみさんにいいました。 
「おい、はやくしたくをして、いっしょに畑へきてくれ」 
「いったい、どうしたんです?」 
と、おかみさんがたずねました。 
「ウサギを相手に金貨一枚とブランデーひとビンのかけをしたんだ。あいつとかけっこをするんだから、いっしょにきてくれ」 
「まあ、あきれたわ。あんた、頭がどうかしたんじゃないの? いくらなんでも、ウサギとかけっこをしようなんて」 
「だまってろ。おまえの知ったことじゃない。男のしごとに口をだすな。さあ、したくをして、いっしょにこい」 
 ハリネズミのおかみさんは、しかたなくいっしょについていきました。 
 ハリネズミは、おかみさんにいいました。 
「ぼくのいうことをよくきいててくれ。ほら、むこうに長い畑が見えるだろう。あそこでかけっこをするんだ。ひとつがウサギのコースで、もうひとつがぼくのコース。むこうがわからかけだすんだ。おまえはここに立ってさえすればいい。そしてウサギがむこうがわについたら、こっちから『ぼくはもう、ついてるぞ』と、どなってくれ」 
 こうして畑のそばにやってきますと、ハリネズミはおかみさんに立っている場所をおしえて、それからスタート地点までいきました。 
 スタート地点にいってみると、もうウサギがきていました。 
「さあ、はじめようじゃないか」 
と、ウサギがいいました。 
「いいとも」 
と、ハリネズミもいいました。 
「じゃ、いくぞ!」 
と、そういって、二人ともじぶんのコースにつきました。 
「いーち、にーい、さーん!」 
 ウサギは、風のように畑をかけおりました。 
 ところがハリネズミは、ほんの三歩ほどかけたかと思うと、畑の中にしゃがみこんで、そのままじっとしていました。 
 ウサギが全速力で畑の反対側に走りつきますと、ハリネズミのおかみさんが、 
「ぼくはもう、ついてるぞ」 
と、声をかけました。 
「そんな、いつのまに!」 
 ウサギはビックリしていいました。 
 そして、もう一度走ってきた道をふり返ると、 
「もういちどだ! こんどはさっきのところまで勝負だ!」 
と、どなりました。 
 そしてまた、風のようにかけだしました。 
 ウサギがスタート地点にたどり着くと、ハリネズミが、 
「ぼくはもう、ついてるぞ」 
と、声をかけました。 
「まだまだ、もう一度だ。まわれ右!」 
と、ウサギはどなりました。 
「おやすいご用」 
と、ハリネズミはこたえました。 
「いくどでも、きみのすきなだけやろう」 
 こうしてウサギは、それから七十三ベんも走りつづけましたが、そのたびごとにハリネズミが勝ちました。 
 ウサギがどんなにはやく走っても、その場に待っているハリネズミかハリネズミのおかみさんかが、 
「ぼくはもう、ついてるぞ」 
と、いうのです。 
 七十四へんめには、さすがのウサギも、もう走れなくなって、その場にたおれてしまいました。 
「こうさんだ、金貨とブランデーをやるから、ゆるしてくれ」 
 その日からウサギは、ハリネズミをバカにしなくなったということです。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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