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10月5日の世界の昔話

旅人のゆめくらべ

旅人の夢比べ
フランスの昔話フランスの情報

 むかしむかし、二人の商人と一人のお百姓が、三人一緒に都へ向かっていなかの道を歩いていました。
 お昼になったので、三人は食事をしようと腰をおろしました。
 ところが食べ物は、小さなパンが一つだけです。
 そこで、一人が言いました。
「こんな小さなパンを、三人で分けてもしかたがないな。どうだろう、何かの勝負をして、勝った者が一人で食べるのは」
「それは良い考えだけど、どんな勝負をするんだ?」
「そうだな、これから三人で昼寝をして、一番素晴らしい夢(ゆめ)を見た者が勝ちにしよう」
「よし、それでいこう」
 さっそく三人は木のかげへ行って、昼寝を始めました。
 しばらくたって、昼寝からさめた三人は、
「ああ、よく寝たな。さて、お互いにどんな素晴らしい夢を見たかな」
と、夢の話しをはじめました。
 まずは、おしゃべり上手な商人の一人が言いました。
「わしは、天国へ行った夢を見たよ。
 天国には、天の使いの鳥に乗って行ったんだ。
 天国はキラキラしていて、どこもかしこも金色に美しく光っていた。
 そして素晴らしい音楽が聞こえ、きれいな花がいっぱいに咲いていた。
 花からは心をあらわれるような、よい香りがただよっていた。
 本当に、素晴らしい夢だったよ」
 するともう一人の商人も、負けじと言いました。
「わたしの夢は、地獄へ行った夢さ。
 地獄はやっぱり、すごいところだった。
 こわい顔の地獄の王さまや家来のオニたちが、とてもいばっていた。
 そして悪い事をした人々が、オニたちにいじめられて苦しそうだったよ」
 もう一人の商人も、地獄の夢を上手に話しました。
「さあ今度は、あんたの番だよ」
 言われたお百姓は、
「うん・・・」
と、言ったきりで、しばらくだまっていました。
 ところがふいにお百姓は三人の前に置いてあるパンを取ると、一人でムシャムシャと食べてしまいました。
「あれっ?」
「おやっ?」
 ほかの二人はびっくりすると、怒り出しました。
「誰の夢が一番素晴らしいか、まだ決まっていないぞ! なのにパンを食べてしまうとは、どういう事だ?!」
 するとお百姓は、すました顔で言いました。
「うん、わたしはね、あんたたちが天国や地獄へ行く夢を見たんだよ。
 天国や地獄へ行った人は、もう戻ってこないだろうと思ってね、わたしは残ったパンを食べたんだ」
 この思いがけない答えに、ほかの二人は、
「これはやられたな」
と、ちょっぴりくやしそうな顔をしましたが、すぐに笑い出しました。
「天国や地獄は遠くても、都まではもうすぐだ。さあはやく都へ行って、うまい物でも食べよう」
 そう言うと三人は、また旅を続けました。

おしまい

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