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 9月18日の日本民話 2
 
   
 猪苗代湖(いなわしろこ)の始まり
 福島県に伝わる弘法大師話 → 福島県の情報
  むかしむかし、会津(あいづ→福島県)の磐梯山(ばんだいさん)のふもとを歩いていた旅のお坊さんが、機織り(はたおり)の音がする家へ水をわけてもらいに行きました。機(はた)を織(お)っていたのは美しい女の人でしたが、水をわけてほしいとお願いするお坊さんを見ようともせずに、
 「あっちへ行きな。他人に飲ませる水など、一滴もないよ」
 と、冷たく言って、機を織り続けました。
 「・・・そうですか」
 お坊さんはあきらめると、今度は家の前でお米をといでいる、人の好さそうな奥さんに頼みました。
 「喉が渇いて、困っております。その米のとぎ汁でもかまわないので、一杯飲ませてほしいのです」
 すると奥さんはにっこり笑って、手桶(ておけ)に残ったきれいな水をお坊さんに差し出しました。
 「さあ、これをどうぞ」
 そして、おいしそうに水を飲み干すお坊さんに、頭を下げて言いました。
 「このあたりは、飲み水に不自由しております。お疲れなのに十分の水を差し上げられず、申し訳ありません」
 「いやいや。こんなにうまい水は、初めてです。ありがとうございました」
 お坊さんは礼を言うと、ぐるりと辺りを見渡して言いました。
 「大丈夫。明日の朝になれば、きっといい事がありますよ」
 
 さて、翌朝の事です。
 あの心優しい奥さんは、家の外へ出てびっくり。
 なんと家の前には、水を満面にたたえた湖が広がっていたのです。
 「これは・・・」
 奥さんは、ふと気がつきました。
 「あのお坊さま、あのお坊さまが、湖を作ってくれたのだわ。ありがたい、ありがたい」
 奥さんが手を合わせて感謝していると、湖のまん中から助けを呼ぶ女の叫び声が聞こえてきました。
 見てみると、あの意地悪な機織り女の家だけが、湖の中にとり残されていたのです。
 
 こうして出来た湖が今の猪苗代湖(いなわしろこ)で、意地悪な機織り女が取り残された小島が扇島(おおぎしま)と呼ばれています。
 おしまい  → 猪苗代観光協会 公式サイト   
 
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