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 3月2日の日本民話 2
 
  
 だまされたオオカミ
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 投稿者 「眠りのねこカフェ」
  むかしむかし、あるところに、とてもいじわるなオオカミがいました。(ひまだなー。だれかいじめるやつはいないかなあー)
 川のそばをプラプラ歩いていると、むこうからウサギがやってきました。
 「やあ、ウサギどん。おらと一緒に遊ばないか?」
 「・・・・・・」
 ウサギがだまって通りすぎようとすると、オオカミはしつこくさそいます。
 「川むこうの森に、すてきな花がさいているんだ。とりに行こうよ」
 ウサギはしかたなく、オオカミについていくことにしました。
 オオカミはさっそくかれ木を一本ひろってきて、川の上にかけました。
 「さあ、ウサギどんから先にわたりなよ」
 「だって、何だかおれそうだよ」
 「大丈夫。ぼくだって平気なんだから」
 「うん、じゃあ・・・」
 ウサギはこわごわと、かれ木の橋をわたりはじめました。
 ところが、橋のとちゅうまで行くと、
 ポキッ!
 かれ木の橋がおれて、ウサギはあっというまに川におちてしまいました。
 「た、たすけてー!」
 ウサギはもがきながら、どんどん流されていきます。
 「あははははは。ざまあみろ」
 オオカミは流されるウサギを見て、手をたたいて喜びました。
 でも、川下へ流されたウサギは、うまいぐあいに岩につかまり、やっと川からはいあがることができました。
 (オオカミめ! 見ていろよ! 必ずしかえしをしてやるからな!)
 ウサギはオオカミに見つからないよう、こっそり家へ帰りました。
 次の日の朝、オオカミがまだ寝ていると、
 「オオカミどん! オオカミどん!」
 と、戸をたたく者があります。
 「うるさいなあ、だれだよ」
 オオカミが戸を開けてみると、なんとウサギが立っているではありませんか。
 「う、うっ、ウサギどん!」
 オオカミはビックリです。
 昨日、たしかに川でおぼれ死んだはずなのですから。
 「ま、まさか幽霊(ゆうれい)?」
 すると、ウサギが言いました。
 「何をねぼけているんだい。この二本の足が見えないの? そうじゃなく、オオカミどんのおかげで竜宮(りゅうぐう)まで行ってきたんだよ」
 「竜宮だって? もしかして、あの竜宮かい?」
 オオカミが、身をのりだしてきました。
 「そうさ。あれから川をどんどん流れていって海へついたら、大きなカメさんがやってきて、竜宮へ案内してくれたんだ。きれいな乙姫(おとひめ)さまと一緒にごちそうを食べて、魚たちのおどりも見せてもらった。そりゃ、もう楽しくて楽しくて」
 それを聞くと、オオカミが待ちきれずに言いました。
 「おらも、行きたい!」
 「そうさ。だからこうやって、知らせに来たんじゃないか」
 「ありがとう。でも、おらはおよげないよ」
 「大丈夫、このふくろに入って流れていけば、一人でに海へ出られるさ」
 「なるほど、そいつはありがたい」
 ウサギはオオカミをつれて、川のそばにいきました。
 それから大きなふくろの口を開けて、オオカミを中に押し込みます。
 「ほらほら、まだしっぽが出ている。もっとおくへ」
 オオカミはふくろのおくへもぐって、体をまるくしました。
 「そんなら、ふくろの口をとじるよ」
 ウサギはひもで、しっかりと口をとじました。
 「苦しくて、息ができないよ」
 オオカミが、ふくろの中から言いましたが、
 「なに、大丈夫さ。すぐにカメさんが来てくれるから。じゃあ、乙姫さまに会ったらよろしくね」
 ウサギは、力いっぱいふくろをけりました。
 ふくろはゴロゴロところがり、川の中へどっぷん。
 それから、プカリプカリと流れていきました。
 でもそのうちに、水がしみこんできて、ふくろがしずみはじめました。
 「く、く、苦しい。だれか助けて」
 オオカミは、ふくろの中であばれまわりましたが、どうする事もできません。
 (しまった、ウサギにだまされたんだ!)
 と、思った時には、オオカミは川のそこにしずんでしまい、二度と浮き上がる事ができませんでした。
 おしまい   
 
 
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