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      第 252話 
          
          
         
海の怪光(かいこう) 
長崎県大村市の民話 → 長崎県情報 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
       むかしむかし、静かで美しい大村湾(おおむらわん)に、夜になると不思議な光が見えるようになりました。 
 湾の中に臼島(うすじま)という小さな島がありますが、光はその近くでよく現れのです。 
 不思議な光は黄色く光ったかと思えば、次の日は銀色に光ります。 
 そして次の日は青色と、毎晩の様に色が変わります。  
「おらも見たが、ほんに妙な光だ」 
「ああっ、しかもただ光るだけでなく、ぐるぐる回り出したり、急に消えたりしたぞ」 
「これは、悪い事の前ぶれかもしれんな」 
 海辺の村人たちは、口々にうわさをしました。 
 そしてうわさが広まると、漁師たちは恐ろしくて海に出ようとはしませんでした。 
 やがてこのうわさは、お城の殿さまの耳にまで届きました。 
 殿さまが見に行っても、その不思議な光は毎晩のように現れます。 
「うむ。これは、戦の起こる前ぶれじゃろうか? それとも、悪い病が流行る前ぶれじゃろうか?」 
 そこで殿さまは光の正体をつきとめようと、城下のあちこちに立て札を立てました。 
《光の正体をつきとめた者には、ほうびをとらせる》 
 しかし村人たちは怖がって、誰一人申し出る者はいませんでした。 
 
 そんなある晩の事、三郎という若い漁師が一人で舟をこいで臼島へと向かいました。 
(おらが、光の正体を確かめてやる)  
 その夜は、また一段と光が明るく輝く晩でした。 
 三郎は体に綱をゆわえると、暗い海の中に飛び込みました。 
 そして海底めがけてもぐっていくと、突然海の底からひと筋の白い光がさしてきました。 
(よし、あれだな) 
 三郎が光をめざしてどんどんもぐっていくと、そこには今まで見た事がない大きな真珠貝(しんじゅがい)が、ぱっくりと口を開いているではありませんか。 
 その中にはこぶしほどの大きな真珠が入っていて、光はそこから出ているのです。 
 三郎は両手で真珠貝をかかえると、なんとか舟まで持っていきました。 
 
 次の日、三郎は真珠貝を持ってお城へ上がりました。 
「殿さま、これが光の正体です。今夜から、光が現れる事はないでしょう」 
 その言葉通り、その夜から不思議な光が現れる事はありませんでした。 
「三郎よ、よくやった。これで漁師たちも、安心して海に出られるだろう」  
 殿さまは大喜びで、三郎にたくさんのほうびを取らせらました。 
 
 この珍しい大真珠は大村の殿さまの家宝として、長く伝えられたそうです。 
      おしまい 
         
       
        
 
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