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 第 119話
 
  
 どっちが本物?
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  むかしむかし、山奥の一軒家に、木こりとおかみさんと、生まれたばかりの赤ちゃんがいました。ある日の事、木こりが仕事から戻って来ると、いろりのそばに二人のおかみさんが座っているのです。
 「これは?」
 顔も着ている着物もそっくりで、どっちが本当のおかみさんか見分けがつきません。
 おまけに二人とも赤ちゃんを抱いていて、赤ちゃんの顔と着物もそっくりです。
 (ははーん。さては、タヌキのしわざだな)
 木こりはわざと平気な顔でおかみさんたちの横に座ると、いろりの中に火ばし(ひばし→炭火などをつかむ金属製のはし)を入れました。
 いろりの火で、火ばしはまっ赤になりました。
 それをつかんで、木こりが言いました。
 「はて、どっちが本物かな? わしの嫁なら、耳を動かすはずだが」
 そのとたん、一人のおかみさんの耳が、ピクピクと動きました。
 「お前が偽者だ!」
 木こりはいきなり、その動いた耳に火ばしをつきさしました。
 「フギャーーー!」
 火ばしで耳に突き刺されたおかみさんは、たちまちタヌキの姿に戻って、転げる様に逃げて行きました。
 「まったく、しようのないタヌキだ」
 木こりはホッとして、本物のおかみさんと赤ちゃんを優しく抱きしめました。
 おしまい   
 
 
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