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 第 110話
 
  
 カワウソの仕返し
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  むかし、宮城県の網地島(あじしま)には、たくさんのカワウソが住んでいました。カワウソはとても利口な動物なので、年を取ると化ける事が出来ると言われています。
 
 さて、島にはカワウソをまつったカワウソ神社があり、神社の近くにはけちで有名な権三(ごんぞう)という男が住んでいました。
 権三は、島の人たちが神社に供えていくアズキダンゴを、
 「どうせ、神さまが食うわけではねえしな」
 と、盗んで食べていました。
 
 ある年の夜の事です。
 この日は大潮(おおしお)なので、潮がひくと島の人たちは岩場におりて岩についている海藻(かいそう)を取るのでした。
 神社のアズキダンゴをお腹いっぱい食べた権三が、ひと寝入りして潮がひくのを待っていると、
 「おーい、権三よ。磯(いそ)へ行かねえのか?」
 と、声をかける者がいました。
 「おおっ、もうそんな時間か?!」
 権三は飛び起きると、急いで外へ出ていきました。
 すると目の前に、大きな黒いかげが立っていたのです。
 「なっ、なんじゃこりゃ!?」
 権三はビックリして家の中へ逃げ込もうとしましたが、後ろから強い力で抱きつかれてしまい、動く事が出来ません。
 権三があわてて家の敷居(しきい)にしがみつくと、相手は力いっぱい権三の体を引っ張りあげようとします。
 「ぬぬぬっー!」
 権三が必死で敷居にしがみついていると、相手はあきらめたのか、そのまま家から出て行ってしまいました。
 「はあ、はあ・・・・。助かった」
 権三は家の戸締まりをすると、磯(いそ)には行かずにふとんをかぶって横になりました。
 「あれは、何だったのだ? まっ黒で、何も見えんかったが、力は強かった。それにプーンと、生ぐせえにおいがしたような気もするが」
 そんな事を思っていると、家の裏のウマ小屋でウマがヒヒーンと鳴きました。
 「あいつ、今度はウマのところへ行ったな。おれの大事なウマを、どうするつもりじゃ?」
 ウマが心配になりましたが、権三は恐ろしくて見に行く事は出来ません。
 
 翌朝、権三がウマ小屋へ行ってみると、ウマの姿が消えていました。
 ウマ小屋からウマの足跡がついているのでたどっていくと、カワウソ神社の裏の海に権三のウマが死んで浮いていました。
 ウマは権三の身代わりとして、連れて行かれたのかもしれません。
 
 その後、権三が磯(いそ)で海藻(かいそう)を取っていると、向こうの岩かげから自分そっくりの顔が姿を現しました。
 自分そっくりの顔は何度も何度も姿を現すので、権三はとうとう頭がおかしくなってしまったそうです。
 
 岩のかげから何度も自分と同じ顔を見せるのは、カワウソがよくやる術だそうです。
 権三が神社に供えたダンゴを盗んだので、怒ったカワウソが仕返しをしたのでしょう。
 おしまい   
 
 
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