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 第 106話
 
  
 殿さまは物知らず
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  むかしむかし、ある殿さまが数人の家来を連れて、自分の領地(りょうち)の見回りに行きました。お百姓(ひゃくしょう)たちは殿さまが見回りに来ているなんて知らないので、こえだめから下ごえをくみ出して、それを作物の間にかけていました。
 そのにおいがあまりにもくさいので、殿さまは鼻をつまんでたずねました。
 「わぁっ、なんじゃ、このひどいにおいは? あれは、何をしておるんじゃ?」
 「はっ、おそれながら、あれは下ごえと申しまして、人の小便や大便をこえだめで腐らせて、畑にかけているのでございます。そうすると野菜が、おいしくなるのだそうでござります」
 「なんと。それではわしが食べる野菜も、そうしておるのか?」
 「はっ、まことにおそれながら」
 「汚いのう。いくらおいしくなると言っても、あんな物をかけていたとは。・・・いいか、この先わしが食べる物には、あのような物を決してかけるでないぞ」
 
 それからしばらくして、こやしをかけずに作った野菜が殿さまに出されました。
 すると殿さまは、一口食べて、
 「おや? どうも、いつものようなうまさがないが?」
 と、言うのです。
 家来がわけを話すと、殿さまは家来に野菜の入ったうつわを突き出して、
 「こうもまずいとはな。・・・仕方がない、これへ、下ごえとやらをかけてきてくれ」
 と、言ったそうです。
 おしまい   
 
 
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