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 7月15日の小話 
 無理な願い
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 投稿者 「フー」  ハーリ・クィン朗読館
 
  美人とはお世辞にも言えない女が、亭主(ていしゅ)の浮気で苦労をして、ポックリと死んでしまいました。地獄(じごく)のオニたちが女をえんま大王のところに連れて行くと、
 「えんまさまに、お願いがございます。
 なにとぞ私を幽霊にして、しゃば(→人間が住んでいる世界)へ帰らせて下さい。
 憎い亭主にたたってやらねば、死んでも死にきれません!」
 えんま大王は、これを聞くと、
 「しかしなあ。むかしから幽霊は、美人がなるものと決まっておる。
 気持ちは分かるが、その顔では無理じゃ」
 「そっ、そんなあ・・・」
 女が落ち込んでいると、気の毒に思ったオニたちが女に耳うちをしました。
 「おい。幽霊ではなく、化け物にしてもらえ、化け物に」
 それを聞いたえんま大王が言いました。
 「よし、化け物としてなら、その願いをかなえてやろう」
 「本当ですか?
 この際、化け物でも何でもかまいません。
 いいえ、どうせなら、ものすごい顔の化け物にしてください。
 その方が、亭主を驚かす事が出来るでしょう」
 「うむ、任せておけ。
 とびっきり、もの凄い顔の化け物にしてやる。
 ・・・それでは行くぞー。えい!」
 えんま大王の掛け声とともに、女は自分の家に戻っていました。
 (よし、亭主に恨みをはらすぞ。・・・しかし、どんな化け物になったんだろう?)
 女は気になり、持っていた手鏡で自分の顔を見てみました。
 「・・・!!」
 何とそこにうつっていたのは、今まで通りの自分の顔だったのです。
 おしまい  
 
 
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