|  |  | 福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 1月の江戸小話 > 縁起かつぎ
 1月24日の小話  
 縁起かつぎ
  むかし、あるところに大きな店がありました。商売をしていれば誰でも少しは縁起をかつぐものですが、この店の旦那ときたら大の縁起かつぎです。
 特に、『し』や『四』の付く言葉は、縁起が悪いといって絶対に使いません。
 たとえば、お尻の事は、おけつと言うくらいです。
 新しい小僧さんをやとう時には、必ずその事を言って、
 「うっかりでも、『し』や『四』の付く言葉を口にしたら罰金を取る。
 その代わり、わしがもしも口にしたら罰金を払おう。
 わかったら、そのつもりで働きなさい」
 と、約束をさせました。
 
 ある時、さだ吉という小僧さんがやとわれました。
 なかなかとんちのきく、さだ吉は、
 「よし、旦那から罰金を頂くとするか」
 と、知恵を働かせました。
 
 ある日、さだ吉は店のお使い先から帰ってくると、
 「旦那さま、旦那さま。お使いの途中で珍しい物を見つけました」
 「ほう、何を見つけたんだ?」
 「はい、木のかまで、ごはんを炊いている人がいました」
 旦那は、それがさだ吉のとんちだとは気がつかずに思わず、
 「馬鹿な。木のかまでは、かまの尻がこげるだろう」
 と、言ってしまいました。
 「はい、罰金!」
 「ああっ、しまった!」
 こうしてさだ吉は、旦那から罰金をもらう事に成功したのです。
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
  
 
 
 |  |  |