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11月23日の百物語

山ナシとり

山ナシ取り

日本語 ・日本語&中国語

 むかしむかし、とても親孝行(おやこうこう)な三人兄弟がいました。
 父親が早くに死んだので、母親が一人で三人を育てたのです。
 しかしその母親が病気になり、三人は必死に母親の看病(かんびょう)をしました。
「おっかさん、なにか食べたい物はないか?」
 三人が心配してたずねると、母親が言いました。
「おら、奥山の山ナシ(→直径が2センチほどのバラ科の落葉高木の果実で、西日本から中国に分布)が食べたい」
 奥山の山ナシは大変おいしいと評判ですが、でもそこには恐ろしい妖怪が住んでいて、今まで山ナシを取りに行った者が何人も帰って来なかったのです。
「よし、おれが行こう」
 一番年上の兄さんが、かごを背負って山ナシを取りに行きました。

 山をどんどん登って行くと大きな岩があり、その上にやせたおばあさんが座っています。
 おばあさんが、声を掛けました。
「これこれ、どこへ行く?」
「おら、奥山へ山ナシを取りに行く。山ナシはどこにあるか、教えてくれ」
「いかん、いかん。あそこには恐ろしい妖怪がいて、お前を食ってしまうぞ」
「どうしても、行かねばならぬのだ。頼む、教えてくれ」
 兄さんがしつこく頼むので、おばあさんは仕方なく教えてくれました。
「この先の三本道のところに、笹(ささ)が生えている。
 その笹が、
『行けっちゃがさがさ』『行くなっちゃがさがさ』
と、鳴ってるから、
『行けっちゃがさがさ』
と、鳴ってるほうの道を行くがよい」
「ありがとう」
 しばらく行くと、おばあさんの言った通りに道が三本に別れていて、そこに笹が生えていました。
 しかしお兄さんは、
(ばあさんの言う事なんか、あてになるもんか)
と、思って、笹が『行くなっちゃがさがさ』と鳴ってる右の道を進んでいったのです。
 すると大きな沼があって、沼のほとりに山ナシの実をつけた木が何本もたっていました。
「こいつは、すげえや」
 兄さんが喜んでその一本に登ると、兄さんの影が沼にうつりました。
 そのとたん、沼の水がグワッとゆれて、いきなり兄さんを飲み込んだのです。

 さて、いくら待っても兄さんが戻って来ないので、
「よし、今度はおれが行こう」
と、二番目の兄さんが出かけました。
 ところが二番目の兄さんもおばあさんの言う事を聞かずに、笹が『行くなっちゃがさがさ』と鳴ってる左の道を選んだので、一番上の兄さんと同じ様に、沼の妖怪のえじきになってしまいました。

 二人の兄さんが戻って来ないので、今度は一番下の弟が出かけました。
 どんどん山奥へ登って行くと、大きな岩の上にやせたおばあさんが座っています。
「これこれ、どこへ行く」
「おら、奥山へ山ナシを取りに行く」
「いかん、いかん、あそこには恐ろしい妖怪がいて、お前を食ってしまうぞ」
 そこで弟は病気の母親に山ナシを食べさせたい事や、二人の兄さんが戻って来ない事を話しました。
 すると、おばあさんは、弟に刀を渡して言いました。
「お前の兄たちは、わしの言う事を聞かぬから妖怪に飲み込まれたのじゃ。だが、兄たちを助けたいというなら仕方がない。妖怪のいる『行くなっちゃがさがさ』の方に行け。それから困った時は、これを使え」
 弟は二人の兄さんを助ける為に、危険な『行くなっちゃがさがさ』の道を行きました。

 どんどん進むと川があり、かけた茶わんが流れてきました。
(何かの役に立つかもしれない)
 弟はそれを拾ってドンドン行くと、大きな沼の前に出ました。
 沼のほとりには山ナシの木が何本もたっていて、おいしそうな実がぶら下がっています。
 弟が喜んで木に登ろうとしたら、山ナシの実が風にゆれながら歌い出しました。

♪東の側はあぶねえぞ
♪西の側もあぶねえぞ
♪北の側は影うつる
♪南の側なら安心だ

(これは、南の側の木から登れという事だな)
 そう思って南の側にある木に登ったら、おいしそうな山ナシの実がすずなりです。
 弟は夢中で実をもぎ取り、背中のかごに入れました。
 ところが降りる時に枝を間違えて、北側の木に足をかけてしまったのです。
 そのとたんに沼の水が二つに割れて、中から出てきた大入道の様な妖怪が弟を頭から飲み込もうとしました。
 しかし弟はあわてずに、おばあさんからもらった刀を抜いて妖怪ののどを突き差しました。
「ウギャャャャ!」
 妖怪は沼の上に倒れて、そのまま動かなくなりました。
 弟が倒れた妖怪に飛び乗って刀で腹を切り裂いてみると、妖怪のお腹から二人の兄さんが出てきました。
 しかし二人ともグッタリして、全く動きません。
 そこで弟は拾った茶わんで沼の水をすくい、兄さんたちに飲ませてあげると、不思議な事に二人はたちまち元気になりました。

 その後、弟が持ち帰った山ナシを食べた母親の病気はよくなり、三人兄弟と母親は、いつまでも幸せに暮らしたという事です。

おしまい

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