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10月8日の日本の昔話

吉四六さんの水風呂
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【大人も良く眠れる睡眠朗読】やすらぐ日本昔話 元NHKフリーアナ お話し読み聞かせ
むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
ある時、吉四六さんは大勢の百姓たちと一緒に米を馬に積んで、年貢を納める為に役人の所へ向かいました。
この日はとても暑い日だったので、みんなへとへとです。
特に馬は重い米だわらをつけているので、可哀想なほど苦しそうです。
でももう少し行くと、小さな泉があります。
あまり水が良くないので人は飲めませんが、馬なら大丈夫です。
「もう少しだ、我慢しろよ」
みんなはそれぞれ自分の馬をいたわりながら、山道を進みました。
そしてやっとの事で、その泉に到着したのです。
「さあ、飲みな」
先頭の百姓が、馬を泉のそばに引き寄せましたが、
「あっ! ・・・なんて事だ!」
長い日照り続きだった為に泉の水が減って、もう少しの所で馬の口が水に届かないのです。
「おい、誰かおけを持っていないか?」
「・・・・・・」
しかし誰も、そんな用意はしていません。
百姓たちは代わる代わる自分の馬で試してみましたが、どの馬ももう少しのところで届きません。
「やれやれ、これは弱った」
「このまま水も飲ませずに無理をすれば、馬が倒れてしまうぞ」
みんなが困っていると、吉四六さんが言いました。
「おいみんな、ちょっと待ってろ。おれがうまく馬に水を飲ませてやるから」
そして吉四六さんは着物を脱いで、裸になりました。
「吉四六さん、もしかして掘るつもりか? いくら掘っても、これ以上は水はわかないよ」
みんなはそう言って笑いましたが、でも吉四六さんは構わずに泉の中に飛び込んで首までつかると、向う側に身を寄せました。
「うひゃーーっ、ちょっと冷たいが、こりゃいい気持ちだ。さあ、これで水かさが増したぞ。もう何人かが手伝ってくれりゃあ、馬の口が届くはずだ」
それを聞いたみんなは、ようやく吉四六さんの考えがわかりました。
「なるほど! 掘るんじゃなくて、飛び込んで水かさを増したのか。これは名案、さすがは吉四六さんだ。よし、わしらも手伝うぞ」
ほかの百姓さんたちも裸になって泉に飛び込んだお陰で、馬は無事に泉の水飲む事が出来たのです。
おしまい
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