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        福娘童話集 > お薬童話 > ヒステリーをやわらげる お薬童話 
         
        
       
かわいそうなフクロウ 
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       むかしむかし、森に住んでいた一羽のフクロウが、えものを探しているうちに近くの小さな町にまよいこみました。 
 そして夜は、ある家の納屋(なや)ですごすことにしたのです。 
 さて、夜が明けると、納屋にやってきた他の鳥たちが初めて見るフクロウの姿にビックリして、メチャクチャにさわぎ出しました。 
 あまりのさわぎにフクロウの方もこわくなって、納屋からでるにでられません。 
 やがて、そのさわぎを聞きつけた納屋の持ち主の男がやってきました。 
 そしてその男も、初めて見るフクロウの姿にビックリ。 
「なんだ、この生き物は! 目がまん丸で大きく、首がクルクル回るとは! これはきっと、怪物にちがいない!」 
 男は町で一番えらい、町長にそうだんにいきました。 
「怪物が現れただと? なにをバカなことを。どれどれ、わしが見てやろう」 
 町長が男の納屋にやってきましたが、町長も初めて見るフクロウの姿にビックリ。 
「これはきっと、悪魔(あくま)に違いない! すぐに退治(たいじ)をしよう!」 
 町長は、町の若い男たちを集めるといいました。 
「この町に悪魔が現れた! 退治した者には、金貨をあたえるぞ!」 
 その言葉に、武器を持った大勢の若者が納屋に入っていきましたが、みんな初めて見るフクロウの姿にビックリして、だれもフクロウに手を出そうとはしません。 
と、そこへ、町一番の力持ちが現れました。 
「なんだなんだ、なさけない。このおれさまが、その悪魔をやっつけてやろう」 
 力持ちの男が納屋にやってくると、フクロウが天井のはりにとまっています。 
 フクロウのきみょうな姿に、力持ちの男もビックリしましたが、勇気を出してフクロウのいる天井のはりにのぼっていきました。 
「さあ悪魔め、このおれさまが退治してやる。かくごしろ!」 
 男は手に武器を持ったまま、ジリジリとフクロウに近寄っていきます。 
 フクロウも自分を殺されようとしているのがわかったのか、羽毛(うもう)を逆立てると、目をむきだして鳴き声を上げました。 
「シュフー、シュフー」 
 その鳴き声を聞いて、フクロウが毒をふきだしているとかんちがいした男は、なさけない悲鳴を上げるといちもくさんに逃げてしまいました。 
 町一番の力持ちも逃げてしまっては、もうこの悪魔(フクロウ)を退治できる者はいません。 
「いったい、どうすればいいのだ? おれたちは、このまま悪魔に食べられてしまうのか?」 
 町の人たちがそう言ったとき、町長がある提案をしました。 
「ではこうしよう。この納屋を町のお金で買いとって、町のものにしたうえで化け物もろとも焼きはらってしまうのだ。そうすれば誰も損をしないし、悪魔を退治することができる」 
「そうだ、それがいい」 
 みんなが賛成したので、町のお金で買い取られた納屋は、火をつけられて燃やされることになりました。 
 こうしてかわいそうなフクロウは、フクロウを知らない町の人たちによって、焼き殺されてしまったのです。 
      おしまい 
          
         
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