| 
      | 
     
        福娘童話集 > お薬童話 > 夜泣き・おねしょの お薬童話 
         
        
       
かしこいグレーテル 
グリム童話 → グリム童話の詳細 
      
       むかしむかし、あるお屋敷の主人が、お手伝いのグレーテルに言いました。 
「今日の晩ごはんは友だちといっしょに食べるから、ニワトリの丸焼きを作っておくれ」 
 それでグレーテルは、夕方になるとニワトリを焼き始めました。 
「だんなさま。お友だちは来ましたか? もうすぐニワトリの丸焼きができますよ」 
「いや、まだ来ないんだ、どうしたのかな?」 
 やがて、ニワトリの丸焼きが出来ました。 
「だんなさま。お友だちは来ましたか?」 
「それがまだなんだ。すぐよんでくるから、丸焼きを皿にのせておいてくれ」 
 主人が外へ飛び出すと、グレーテルは丸焼きが上手に出来たかどうか確かめるために、一口パクリと食べてみました。 
「うん、おいしくできたわ」 
 ニッコリ笑って、グレーテルは丸焼きを皿にのせました。 
 でも、主人は帰ってきません。 
「丸焼きは、あたたかい方がおいしいのに」 
 そう言って、グレーテルはまた丸焼きをパクリ。 
 それでも、主人は戻ってきません。 
 だから、もう一口パクリ。 
 そのあとも、 
「まだかしら」 
 パクリ。 
「おそいわねえ」 
 パクリ。 
「冷めちゃうのに」 
 パクリ。 
 とうとう、ニワトリの丸焼きを全部食べてしまいました。 
 そこへ主人が帰ってきて、 
「友だちはもうすぐ来るらしい。わたしは今のうちに、食事の時に使うナイフをよく切れるようにしておくよ」 
と、ナイフをとぎ始めました。 
 さあたいへん。 
 自分がニワトリの丸焼きを食べてしまったことを主人に知れたら、グレーテルは怒られてしまいます。 
 どうするか、なやんでいるとき、ついに主人の友だちが来ました。 
「あっ、そうだわ」 
 わるぢえをひらめいたグレーテルは、急いで玄関(げんかん)に行くと、主人の友だちにこっそり言いました。 
「あなたがなかなか来ないので、だんなさまはカンカンに怒っています。どうやら、あなたの耳を切ってしまうつもりらしいですよ」 
 友だちはビックリして、あわてて逃げました。 
 その足音を聞いて、主人はナイフを持ったまま。 
「おーい、どうしてうちでごはんを食べないんだよう」 
と、追いかけました。 
 そのまま二人は一晩中、町を走り回っていました。 
 おかげでグレーテルは、ニワトリの丸焼きを食べたことを主人に知られなくてすみました。 
      おしまい 
          
         
  | 
      | 
     |