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        福娘童話集 > お薬童話 > 風邪(かぜ)の時に読む お薬童話 
         
        
       
オオカミと七匹の子ヤギ 
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       むかしむかし、あるところに、やさしいお母さんヤギと、七匹の子ヤギたちが住んでいました。 
 ある日のこと、お母さんヤギがいいました。 
「おまえたち、お母さんは用事で出かけてくるから、ちゃんとるすばんをしているのですよ。それから、さいきんは悪いオオカミがいるから、用心するのですよ」 
「お母さん、オオカミって、こわいの?」 
「そうだよ。なにしろ、ヤギを食べてしまうのだから」 
「あーん、こわいよー」 
「大丈夫。家の中にいれば大丈夫ですよ。オオカミはガラガラ声で黒い足をしているから、そんなのがお母さんのふりをしてやってきても、けっして家の中に入れてはいけませんよ」 
「はーい、わかりました。では、いってらっしゃい」 
 子ヤギたちはお母さんヤギを見送ると、玄関(げんかん)のドアにカギをかけました。 
 さてしばらくすると、オオカミがやってきて、玄関の戸をたたいていいました。 
「あけておくれ、お母さんだよ」 
 すると、子ヤギたちがいいました。 
「お母さんは、そんなガラガラ声じゃないよ」 
「そうだ、そうだ。おまえはオオカミだろう!」 
(ちっ、声でばれたか) 
 そこでオオカミは、声がきれいになるというチョークを食べて、またやってきました。 
「あけておくれ、お母さんだよ」 
「あっ、お母さんの声だ」 
 子ヤギたちは玄関にかけよりましたが、ドアのすき間から見えている足がまっ黒です。 
「お母さんは、そんな黒い足じゃないよ」 
「そうだ、そうだ。おまえはオオカミだろう!」 
(ちっ、足の色でばれたか) 
 そこでオオカミは、パン屋さんをおどかして、小麦粉(こむぎこ)で足を白くさせました。 
「あけておくれ、お母さんだよ」 
 声もお母さん、ドアのすき間から見える足もまっ白です。 
「わーい、お母さん、おかえりなさい」 
 子ヤギたちがドアをあけると、オオカミが飛び込んできました。 
「ウワォー、なんてうまそうな子ヤギだ」 
 みんなはビックリして、いそいでかくれました。 
 一匹目は、つくえの下。 
 二匹目は、ベットの中。 
 三匹目は、火の入ってないストーブの中。 
 四匹目は、台所の戸だなの中。 
 五匹目は、洋服ダンスの中。 
 六匹目は、洗濯おけの中。 
 七匹目は、大きな時計の中です。 
「グフフフ。かくれてもむだだぞ。みんなさがして食ってやる」 
 オオカミはつぎからつぎへと子ヤギを見つけて、パクリパクリとのみこんでしまいました。 
「フーッ。うまかった。さすがに六匹も食べると、お腹がいっぱいだわい」 
 おなかがいっぱいになったオオカミは、草原の木の下でよこになると、グーグーとひるねをはじめました。 
 まもなく、お母さんヤギがもどってきましたが、家の中を見てビックリ。 
 子どもたちの名前を次々によびましたが、へんじはありません。 
 でも、最後に末っ子の名前をよぶと、末っ子の子ヤギが返事をしました。 
「お母さん、ここだよ」 
 大きな時計の中にかくれていて末っ子だけが、ぶじだったのです。 
 末っ子の子ヤギから話を聞いたお母さんヤギは、おんおんとなきました。 
 なきながら外へ出ていくと、オオカミがすごいいびきをかいてねているではありませんか。 
 そして、そのふくれたおなかが、ヒクヒク、モコモコとうごいています。 
「もしかして、子どもたちはまだ生きているのかも」 
 そこでお母さんヤギは、末っ子にハサミと針と糸を持ってこさせると、ハサミでオオカミのおなかを切ってみました。 
 するとどうでしょう。 
 子ヤギたちが一匹、二匹と、みんな元気にとびだしてきたのです。 
「わーい、お母さんだ。お母さんが助けてくれたんだ!」 
 子ヤギたちはお母さんヤギにだきついて、ピョンピョンとびあがってよろこびました。 
 お母さんヤギも大よろこびです。 
 でも、すぐに子ヤギたちにいいました。 
「おまえたち、すぐに小石を集めておいで。この悪いオオカミに、おしおきをしなくてはね」 
 そして、からっぽになったオオカミのおなかの中に、みんなで小石をつめこむと、お母さんヤギが針と糸でチクチクとぬいあわせてしまいました。 
 さて、それからしばらくたったあと、やっと目をさましたオオカミは、のどがかわいて近くのいずみに行きました。 
「ああ、おなかが重い。少し食べ過ぎたかな?」 
 オオカミがいずみの水を飲もうとしたとたん、お腹の石の重さにバランスをくずして、オオカミはそのままいずみにドボンと落ちてしまいました。 
「わぁ、わぁ、助けてくれー! おれは泳げないんだ! だれか助けてくれー!」 
 
オオカミは大声で助けをよびましたが、きらわれもののオオカミはだれにも助けてもらえず、そのままいずみのそこにしずんでしまいました。 
      おしまい 
          
         
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