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        福娘童話集 > お薬童話 > お腹が痛いときに読む お薬童話 
         
        
       
不思議なリンゴの木 
ポーランドの昔話 → ポーランドの国情報 
      
       むかしむかし、とても働き者のお母さんがいました。 
 お母さんには、ウラジスラフという息子が一人います。 
 ある日、お母さんが野イチゴをバケツ一杯つんで帰ろうとすると、森の道に見た事のないおばあさんがすわっています。 
「どうか、その野イチゴをめぐんでくれないかね」 
と、おばあさんは声をかけてきました。 
 おばあさんは、とてものどがかわいている様子なので、お母さんは野イチゴをバケツごとあげました。 
 おばあさんは野イチゴを全部食べ終わると、お母さんに言いました。 
「ありがとうよ。お礼に、いい事を教えてやろう。あんたの息子は、一番好きな仕事をすれば幸せになれるよ」 
「えっ? それは、どんな仕事ですか?」 
 お母さんが聞いたときには、おばあさんの姿は消えていました。 
 ただ、今までおばあさんが座っていた石の上から、一匹のトカゲが走って行くのが見えました。 
「ああ、今のおばあさんは、きっと魔法使いだったんだね」 
 お母さんはそう思うとうれしくなり、急いで家に帰りました。 
 さっそくお母さんは息子のウラジスラフに、服を作る仕立屋(したてや)と、クツ屋と、剣を作る鍛冶屋(かじや)へ仕事に行かせました。 
 でも、ウラジスラフは、いつもこう思っていました。 
「どの仕事も、金持ちが喜ぶだけさ。ぼくはもっと、別の仕事がしたい」 
 その頃この国では、金銀の糸でししゅうのある服を着るのはお金持ちだけで、貧乏人は一年中、ボロボロの服でした。 
 クツをはけるのもお金持ちで、貧乏人は裸足(はだし)でした。 
 剣を持って戦いに行くのはお金持ちでしたし、ウラジスラフはなにより戦争が嫌いでしたから、剣は作りたくなかったのです。 
「それならお前は、何の仕事がしたいのかい? 一番好きな仕事をすれば幸せになれるって、魔法使いが言ったんだよ」 
「それならぼくは、ウシ飼いがやりたいよ」 
と、いうわけで、ウラジスラフは牧場へ働きに行き、草笛(くさぶえ)をふきながら、のんびりとウシ飼いの仕事を始めました。 
 そんなある日の事、ウシを連れて森へ行くと火が見えました。 
「大変だ! 火事かもしれない!」 
 急いで行ってみると、たくさんのトカゲが火にかこまれているではありませんか。 
「待っていろよ、いま助けてやるからな」 
 ウラジスラフは火を足で消して、トカゲを助けてやりました。 
 すると、中の一匹がおばあさんの姿になって言いました。 
「思ったとおり、あんたは優しくて勇気のある子だ。助けてもらったお礼をしよう。トカゲたちにウシの番をさせて、あたしについておいで」 
 ウラジスラフがおばあさんに連れて行かれたのは、小さなほら穴の中でした。 
 そこには二つの宝石箱があって、一つはルビー。一つはサファイアがつまっています。 
 そしてその奥には、金のリンゴが実っているリンゴの木がありました。 
「いいかい。ルビーを選んだら、あんたは世界で一番美しい人になるだろう。サファイアを選んだら、世界一金持ちで偉くなるだろう。金のリンゴの木を選んだら、貧乏なままだ。でも、リンゴの実をただで病気の人に分けてやれば、病気がなおって喜ばれるだろう。さあ、どれでも好きなのを一つ持って行くといいよ」 
(美しくなるよりも、金持ちで偉くなるよりも、人に喜ばれた方がいいな) 
 ウラジスラフは迷わず、金のリンゴの木を選びました。 
 そのとたん、金のリンゴの木は根っこをメリメリッと地面から抜くと、ウラジスラフについて来ました。 
 ウラジスラフは金のリンゴの木を、家の庭にうえました。 
「まあ、なんて見事なリンゴの木だろ。こんなリンゴの木は見た事ないよ」 
 お母さんはウラジスラフの話を聞くと、目を丸くしてとても喜びました。 
 金のリンゴの木は枯れる事なく、毎日キラキラと金色のリンゴの実をつけました。 
 ウラジスラフはトカゲのおばあさんに聞かされた通り、村中の病気の人に金のリンゴを分けてあげました。 
 すると本当に、金のリンゴを食べたとたん、どんなひどい病気の人もうそのように元気になったのです。 
 あるとき、クマにふまれて死にそうな猟師が、ウラジスラフの家に運ばれて来ました。 
「これはひどい。待っていてくださいね」 
 金のリンゴは一つしか実っていなかったのですが、ウラジスラフはそれをもいで食べさせようとしました。 
 ところがそこヘ、ウラジスラフのうわさを聞いて、お城の王さまが来たのです。 
 王さまは、いばって言いました。 
「わしは、鼻カゼをひいておる。金のリンゴをよこせ」 
 ウラジスラフは、きっぱりと断りました。 
「金のリンゴは一つしかありません。鼻カゼはいずれなおるでしょうが、猟師は今、死にかかっているのです。金のリンゴは猟師に食べさせます」 
 猟師に金のリンゴを食べさせるのを見ると、王さまは怒って金のリンゴの木をひっこぬき、城の庭にうえるように家来に命じました。 
 金のリンゴの木は、引き抜かれないようにとがんばって根をはりましたが、何十人もの家来の力にはかなわず、とうとうひっこぬかれてお城につれて行かれました。 
 ウラジスラフは森へ走って行き、ほら穴を探すとトカゲのおばあさんをよびました。 
 わけを聞いた、トカゲのおばあさんは、 
「それなら、このナシの木を持ってお行き」 
と、いろいろな色のナシの実がなっている木をくれました。 
「緑のナシを食べると、おでこからツノがはえる。赤いナシを食べれば、それは落ちる。青いナシを食べると鼻が大きくなり、黄色いナシを食べれば、元通りになるのさ。よく覚えておくのだよ」 
 ウラジスラフは、いろいろな色のナシの木を連れて城へ行きました。 
「まあ、きれいなナシ」 
「一つ、分けてくださいな」 
 お城のめしつかいやお姫さまは、みんないろいろな色のナシの木から、緑や青のナシをもいで食べました。 
 王さまも、緑のナシを食べました。 
 そのとたん、みんなのおでこからツノがはえたり鼻が大きくなったりで、大騒ぎになりました。 
「これ、このツノをとってくれ」 
 王さまが頼むので、ウラジスラフは、 
「いいですよ。もし、リンゴの木を返してくれるなら」 
と、言いました。 
「わかった。持って行け!」 
 王さまがそう言うので、ウラジスラフは王さまに赤いナシを渡して、みんなにも、元通りになるナシをあげました。 
 それからウラジスラフは庭へ行き、金のリンゴの木を見つけました。 
 でも、金のリンゴの木は枯れて、黒くなっています。 
「おそくなって、ごめんね。さあ、家へ帰ろう」 
 ウラジスラフはそう言って、地面から金のリンゴの木をひきぬきました。 
 するとたちまち、金のリンゴの木は光だして、ウラジスラフが歩きだすと、うれしそうについていったのです。 
 そして、ウラジスラフが自分の庭にうえると、金のリンゴの木は前よりももっとたくさんの金のリンゴの実をつけました。 
 金のリンゴのおかげで、ウラジスラフは村の人たちにとても喜ばれて、本当に幸せでした。 
      おしまい 
          
         
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