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        福娘童話集 > お薬童話 > お腹が痛いときに読む お薬童話 
         
        
       
ハチとクモとアリ 
奈良県の民話 → 奈良県情報 
      
       むかしむかし、ハチがクモのところへやってきて、 
「クモさん、二人でお伊勢(いせ)さまに、お参りしないか?」 
と、言いました。 
「それはいい、毎日たいくつしていたところだ。さっそく出かけよう」 
 そこで二人は旅じたくをして、お伊勢参りに出かけました。 
 するとその途中に、財布(さいふ)が一つ落ちていました。 
「あっ、財布だ!」 
 クモがあわててひろおうとすると、ハチが言いました。 
「だめだよ。わしが先に見つけたんだよ」 
「うそつけ、わしが先だ」 
 二人は財布をはさんで、けんかをはじめました。 
「やいやい、お伊勢さまにいこうと言ったのは、このわしだ、わしがさそわなかったら、この財布は見つからなかったぞ! だから財布はわしの物だ!」 
 ハチが、いばって言うと、 
「なにを言う。わしが下をはっていたから見つけたんだ。お前は空ばかり飛んでいたじゃないか!」 
と、クモがおこって言いました。 
「なにをー!」 
「やるかー!」 
 二人はとうとう、とっくみ合いのけんかをはじめました。 
 するとそこヘ、アリがやってきました。 
「やめろ、やめろ。こんなところでけんかをしてはじゃまだ」 
 アリが二人の間にわって入ったので、二人はやっとはなれました。 
「いったい、どうしたというのだ?」 
 アリが、たずねました。 
「クモさんが悪いんだ。わしの見つけた財布を先にひろおうとしたからだ」 
「うそつけ、財布を見つけたのは、おれが先だ」 
「なにおーっ」 
「なんだとーっ」 
 二人はまた、にらみ合いました。 
「わかった、わかった。おれにまかせろ。おれがけんかしないように、ちゃんとわけてやる」 
 アリはその財布を見て、ニヤリと笑いました。 
「うむ。だいぶお金が入っているようだ。これは百文(→一文は30円ほど)はあるな。でも、人の落とした財布を自分のものにするのはよくないな。ちゃんとお役所に届けなくちゃ」 
「ええっ」 
「そんなーっ」 
 クモとハチは、ガッカリして顔を見合わせました。 
「心配するな。ひろったお金を届けたらお礼がもらえる。だから先に、わしがお礼はわけてやる」 
 アリは財布からお金を出して、かぞえはじめました。 
「クモさんには九文、ハチさんには八文、残りはお役所に届けよう」 
 そう言って、二人に九文と八文を渡すと、アリは残りのあり金を全部持っていってしまいました。 
 クモは九、ハチが八、アリは、あり金を全部という事です。 
      おしまい 
          
         
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