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        福娘童話集 > お薬童話 > 肌荒れをやわらげる お薬童話 
         
        
       
湖山長者 
鳥取県の民話 → 鳥取県情報 
      
       むかしむかし、因幡の国(いなばくに→鳥取県)に湖山長者という、とても欲の深い長者がいました。 
 長者の田んぼは大変広かったのですが、家のしきたりで、その田んぼを一日で植えなければならないのです。 
 だから田植えの日には夜も明けないうちから、数え切れないほどの早乙女(さおとめ→田んぼを植える女の人)たちがずらりと並んで、いっせいに田植えをはじめるのです。 
 
 ある年の田植えの日の事。 
 一匹のサルが子サルをさかさまに背負いながら、山から下りて来ました。  
 それを見つけた早乙女たちが、 
「あれ、サルが赤ん坊をさかさにしてるよ」 
「本当だ。今にも落っこちそう」 
「あれ、落ちた」  
「でも、落ちたのに笑っているよ。可愛いいなあ」 
と、口々にはやしたてます。 
 すると、ほかの場所で田植えをしていた早乙女たちも、 
「何? 何?」 
と、田植えの手を休めて、サルを見ようとしました。 
 これに気がついた湖山長者は、  
「こら! 何をしている! 手を休めるな!」 
と、大声でどなりました。 
 ビックリした早乙女たちはあわてて田植えをはじめましたが、サルに見とれていたため、その日の日暮れになっても田植えが終わりそうになかったのです。 
 家のしきたりを守ろうと、長者はしきりに早乙女をせかしましたが、どうしても日の暮れるまでに終わらない事がわかると、 
「ようし、こうなればお天道(てんと)さんに戻ってもらうより方法がないわい。なあに、この湖山長者に出来ん事などない」 
と、長者は金の扇(おおぎ)を開くと、お天道さんを扇であおぎ返しました。  
 すると、どうでしょう。 
 ふしぎな事に西の山に沈もうとしていたお天道さんが、扇の風に押されるようにもう一度天に戻ったではありませんか。 
「それ、今の間に苗(なえ)を植えろ!」 
 長者が叫ぶと、早乙女たちは急いで田植えを再開しました。 
 そしてようやく田植えが終わったとき、それに合わせるようにお天道さまが沈んだのです。  
 
 さて、この話しは遠くの国まで伝わったので、 
「入り日も招き返す勢いとは、この事だ。わはははははは」 
と、長者は上機嫌です。 
 ですが次の朝、長者は目を覚ますと田植えが終わったばかりの田んぼが、一面水びたしではありませんか。 
 そしてその水はどんどん広がり、長者の屋敷も水の中に沈んでしまいました。 
 
 それから人々は、その時に出来た湖を『湖山池』と呼ぶようになったという事です。 
      おしまい 
          
         
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