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干しな経 
兵庫県の民話 → 兵庫県情報 
      
       むかしむかし、ある家で、法事(ほうじ→身近な人の死んだ日に、みんなで集まってお経をあげたり、お墓参りすること)をする事になりました。 
 そこでお寺へお坊さんを呼びに行きましたが、お坊さんが留守(るす)で小僧(こぞう)さんしかいません。 
 でも小僧さんなら、お経ぐらいよむ事が出来ます。 
「小僧さん。わたしの家へ、法事に来てください」 
「はいはい、わたしでよかったら、すぐまいります」 
 小僧さんはさっそく、お坊さんの衣を着てやって来ました。 
「では、はじめさせていただきます」 
 小僧さんがおじぎをして、さて、お経をよもうと思ったら、ふところにお経の本がありません。 
 あわててやって来たので、持って来るのを忘れてしまったのです。 
 この小僧さんは、本がなくてはお経がよめません。 
(こりゃ、困ったぞ) 
 そう思って窓の外を見ると、軒下(のきした)になっぱの束(たば)が干してありました。 
 小僧さんは、いかにもお経のように、その数をかぞえはじめました。 
「一れん、二れん、三れん、四れん、ああ、五れん、六れん、・・・」 
 一れんというのは、なっぱをつるしてある一本のナワのことで、一れん、二れんとかぞえます。 
 小僧さんはなっぱの束をかぞえ終わると、またはじめから、 
「一れん、二れん、三れん、四れん、・・・」 
と、そればっかりです。 
 窓の外でそれを聞いていた子どもが、小僧さんに言いました。 
「小僧さん、それ、なんというお経じゃ」 
「これは干しな経といって、とてもありがたいお経じゃ」 
「へえ、そんなら、あっちにもまだ、二、三れん、つってあるよ」 
 すると小僧さんは、 
「いや、それはこの次に来たとき、よむつもりじゃ」 
と、言ったという事です。 
      おしまい 
      朗読者情報 台湾居住者 Judy 
             
       日本で20年の生活を経た後、本国の台湾に戻ったジュディーは日本と台湾の架け橋となり、通訳、翻訳、日本語教師を経験後、現在は日本語を使い、様々な分野の録音に携わっています。 
       台湾日文配音者です。 
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      朗読者情報 ひいらぎ 
           
           運営ブログ 「おやすみなさい。またあした。」 
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