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12月27日の小話

おやのおん
   大みそかの晩のこと。
   橋の下で、こじき(→詳細)の親子が、体をすりよせて、ねていました。
   橋の上では、いそがしそうな人の足音が、いったりきたり。
   あんまりさわがしいので、子どもが目をさまして、
  「かあちゃん。あれは、何のさわぎなの?」
  「ああ、あれかい。あれは、借金(しゃっきん)取りといってね。人に貸したお金を、集めて歩いているんだよ」
  「ふーん。こんな寒い晩にかい。楽じゃないねえな」
  「そうだよ。それより、こうして、あったかくねているほうが楽さ」
   ふたりの声に、父親は、むっくり頭をあげて、
「坊や、だれのおかげだとおもう。人に貸す金のない、この親のおんをわすれるでねえぞ」
おしまい