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        福娘童話集 > お薬童話 > お通じを良くするお薬童話 
         
        
       
ふしぎなたいこ 
      
       むかしむかし、げんごろうさんという人が、ふしぎなたいこを持っていました。 
 ひらベったい形のたいこです。 
 表側をトントンたたいて、 
「鼻、高くなあれ。鼻、高くなあれ」 
と、いうと、鼻が高くなります。 
 反対に、裏側をトントンたたいて、 
「鼻、低くなあれ。鼻、低くなあれ」 
と、いうと、鼻が低くなります。 
 げんごろうさんは、人にたのまれると、トントンと、たいこをたたいて、鼻を高くしたり低くしたりしてあげました。 
 ところがある日のこと、げんごろうさんは、ちょっといたずらをやってみたくなりました。 
「トントントントンと、どこまでもたいこをたたいたら、おれの鼻はどこまでのびるのかな。どれ、ためしてみようか」 
 そこで、ひとりでたいこを持って、原っぱへいってトントントントン、たたきました。 
「鼻、高くなあれ。鼻、高くなあれ」 
 すると、鼻はニョキニョキとのびて、腕の長さぐらいになりました。 
 トントントントン、トントントントン。 
 たたくたびに鼻はのびて、木よりも高くなりました。 
 トントントントン、トントントントン。 
 山より高くなりました。 
 トントントントン、トントントントン。 
 そしてとうとう、鼻の先が白い雲に届きました。 
 雲の上は天国です。 
 ちょうど天国の大工さんたちが、天の川の橋をかけているところでした。 
 そこへ、げんごろうさんの鼻が、下からのびてきたのです。 
 でも大工さんは、それが鼻だなんて知りません。 
 うっかり材木とまちがえて、橋のらんかんにしばりつけてしまいました。 
 さて、下の原っぱでは、げんごろうさんがビックリしています。 
「あれっ! 鼻がつかえてしまったぞ。少しひっこめよう」 
 今度は、たいこの裏側をトントントントン、トントントントンと、たたきました。 
「鼻、低くなあれ。鼻、低くなあれ」 
 ところが、鼻のてっペんはギュッとしばってあるので、鼻が短くなるたびに、げんごろうさんは、からだごと空へあがっていきました。 
「ひゃあ、どうしてからだがあがっていくんだ!」 
 げんごろうさんは大あわてです。 
 トントントントン、トントントントン、たたいてたたいて、雲の上までのぼってしまいました。 
 天国ではちょうど、昼休みです。 
 大工さんたちは、昼ごはんを食べにいっていて、仕事場にはだれもいませんでした。 
「なんだ、おれの鼻を材木とまちがえたのか。そそっかしいなあ」 
 げんごろうさんは、なわをほどきました。 
 鼻は元どおりで、やれやれです。 
 でも、どうやって帰ったらいいのでしょう。 
「困ったなあ」 
 考えていると、足もとの雲が、風にふかれて動きました。 
 雲のすきまから、ずーっと下に、青い青い湖が見えました。 
「うわー! いいながめだな。・・・ああっ!」 
 げんごろうさんは、足をふみはずしてしまい、まっさかさまに湖のまん中へ、 
 ボッチャーーン!! 
と、落ちました。 
 何とか助かりましたが、このままではいつかおぼれてしまいます。 
 げんごろうさんは、岸を探して一生けんめいに泳ぎました。 
 ずーっと泳いでいたら、いつのまにか手と足がなくなって、さかなのようにひれとしっぽがはえました。 
 そしてからだには、うろこがはえました。 
 そしてついには、げんごろうさんは、げんごろうブナという、小さなさかなになってしまったのです。 
      おしまい 
          
         
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