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        福娘童話集 > お薬童話 > お腹が痛いときに読む お薬童話 
         
        
       
どろぼうたいじのへ 
      
       むかしむかし、あるところに、なまけものの男がいました。 
 はたらきにでても、ながくはつとまりません。 
 たちまち、家にかえされてしまうので、びんぼうしきっていました。 
 男はそこで、村のちんじゅさまにおまいりして、 
「どこかに、よいはたらき口がみつかりますように」 
と、おねがいしました。 
 すると、ちんじゅの神さまは、めったにおがんでくれるものがないものですから、よろこんで、 
「よろしい。おまえのたのみをききとどけて、めずらしい『へ』をさずけよう」 
と、おごそかにいいました。 
「へっ?」 
 男はガッカリです。 
 へなどもらったところで、なんのやくにもたちません。 
「こら、もっとよろこばんか。へといっても、ただのへではないぞ。このへは、プウーとかスウーとか、そんなケチななりかたはせん。ダリャ! ダリャッ!(だれだ、だれだ)と、でっかい音がする。これで、おまえにはきっと、よいはたらき口がみつかるはずじゃ」 
 ちんじゅの神さまのこえは、それっきり、きこえなくなってしまいました。 
「ああ、せっかくおがんだのに、へしかさずけてもらえんとは」 
 男がはたらき口をさがしにいくと、まもなく、やとってくれるところがみつかりました。 
 ところが、男がときどき、 
「ダリャ、ダリャッ!」 
と、音のでっかいへをするものだから、 
「うるさくてこまる」 
「なんと、ひとさわがせなへをこくやつだ」 
 たちまちきらわれて、ひまをだされてしまいました。 
「これでは、はなしがちがうわい。せっかく、よいはたらき口が見つかったのに、おいだされていくところもない」 
 男が村はずれで、とほうにくれていると、男のうわさをきいた長者(ちょうじゃ→詳細)のつかいがきて、 
「長者さまのおやしきで、はたらかねえか」 
と、いってくれました。 
「それはありがたい。ねがってもないはなしだ」 
 男はこうして、長者のやしきではたらくことになりました。 
 男のしごとは、やしきにあるくらのものを、どろぼうにとられないように、みはりばんをすることです。 
「これなら、おらにもつとまりそうだ」 
 男はまいばん、やしきのくらに入って、みはることにしました。 
 けれども、いくばんたっても、どろぼうがあらわれないものだから、あるばん、男はすっかりゆだんして、くらのなかでグッスリとねむってしまいました。 
 そこに、どろぼうがしのびこんできました。 
「しめしめ、だれもおらんぞ」 
 どろぼうがあんしんして、めぼしい品物を、ふろしきにつつみはじめると、 
「ダリャ、ダリャッ!」 
 いきなり、大きなこえがしました。 
 どろぼうは、それがまさか、へだとは思いません。 
「しまった!」 
 てっきり見つかったと思って、あわてて、にげだそうとしました。 
 けれど、だれもかけつけてくるようすがありません。 
 気をとりなおして見回すと、男が一人、だらしなくねむっています。 
「なんだ。こいつのへの音か。おどかしやがって」 
 どろぼうはおこって、男のしりに、落ちていたたるのせんをつめました。 
「これでよし」 
と、きもちをおちつけて、しごとにかかりました。 
 そしていよいよ、ぬすんだものをかつぎだそうとしたときです。 
 男のしりにつめてあったたるのせんが、スポーンとぬけたから、たまりません。 
 たまっていたへが、 
「ダリャ、ダリャッ、ダリャーッ!」 
 やしきじゅうに、ひびきわたりました。 
 それをききつけたやしきのものが、すぐさまかけつけたので、どろぼうは、あっさりつかまってしまいました。 
「でかした、でかしたぞ。おまえのみごとなはたらきで、どろぼうたいじができた。しかも、いままでぬすまれた物も取り返すことができた」 
 男は長者から、たくさんのほうびをもらったということです。 
      おしまい 
          
         
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