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8月23日のイソップ童話
  
  
  
ゼウスと〈よいこと〉のつまった樽
   ゼウスの神は、樽(たる)に、〈よいこと〉をいっぱいつめ、しっかりとふたをして、ある人にあずけました。
   その人は、樽のなかみが知りたくてたまりませんでした。
   そこで、こっそり樽のふたをすこし持ちあげて、中をのぞこうとしました。
   とたんに、中にはいっていた〈よいこと〉は、ぜんぶ、そのすきまから出て、空高く舞い上がり、神がみのいるところへもどっていってしまいました。
   そのとき樽の底には、希望だけがのこっていました。
  
 だから人間は、逃げていってしまった〈よいこと〉を、いつかはとりもどせるという、希望だけは持っているのです。
おしまい