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1月29日の世界の昔話
  
  
  
  魔法のビール
  デンマークの昔話 → デンマークの国情報
 むかしむかし、ロースキルデというところに、お金持のお百姓(ひゃくしょう)が広い土地をもっていました。
 その土地の中の丘のひとつに、小人(→詳細)とたちが住んでいました。
 ある日のこと、小人たちは結婚式のお祝いで大さわぎをしていました。
 ところが夜おそくなってから、あいにくビールがなくなってしまいました。
 そこで一人の小人が、お百姓のところへいって、トントンと戸をたたきました。
  「こんばんは。ビールを一タル貸してくれませんか。あなたはこのあいだビールをつくったばかりだから、たくさんおもちでしょう。こんどわたしたちがつくったときにかならずおかえししますから」
  と、小人はいいました。
  「おまえさんはだれだね? どこに住んでいるんだね?」
  と、お百姓はたずねました。
  「わたしはあそこの丘に住んでいるものです」
  と、小人はこたえました。
  「よろしい。地下室へいって、一タル持っていきなさい」
  と、お百姓はいいました。
 小人はビールを持って帰っていきました。
 それから三日目の夜、また小人がやってきて、トントンと戸をたたきました。
 お百姓は、おきあがって、
  「だれだね、戸をたたくのは?」
  と、たずねました。
  「わたしですよ」
  と、小人はこたえました。
  「ビールをおかえししにきたんです。地下室へおいておきますよ。それからお礼に、うまい魔法をかけておきますからね。あなたがもしタルの中をのぞきこみさえしなければ、タルからは、いつでもあなたのほしいだけビールがでてきます。いつまでたってもからっぽになりませんよ」
 それはほんとうでした。
 タルからは、いくらついでもビールがでてくるのです。
 そのかわり、もちろんだれ一人、タルの中をのぞいて見るものはありませんでした。
 ところがあるとき、この家に新しい女中(じょちゅう)がきました。
  (あのタルからは、どうしていくらでもビールがでてくるのかしら?)
  と、女中はふしぎに思いました。
 女中はタルの中に、あとどのくらいあるかのぞいてやろうと思いました。
 ところがタルの中をのぞいたとたん、女中はビックリして、思わず「キャアーッ!」と、さけびました。
 なんとタルの中は、カエルでいっぱいだったのです。
   このときからというもの、タルの中のビールはなくなってしまいました。
おしまい