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1月12日の世界の昔話
  
  
  
  お月さま狩り
  アイスランドの童話 → アイスランドの国情報
 むかしむかしのお話です。
 アイスランドのある村の人びとが、南のほうの山のいただきを見ると、そのすぐ上にお月さまがかかっていました。
 あの山の上までいけば、だれでもわけなくお月さまをつかまえて、村まで持ってこられそうです。
 もし、ながい冬の夜のあいだじゅう、お月さまをそばにおいておくことができたら、さぞかしきれいですてきでしょう。
 それにそうなれば、ランプにいれる油がなくてもいいわけです。
 あんなにかがやいている大きなお月さまなら、きっと自分たちのためにも、あかるくてらしてくれるでしょう。
 そこで村の人たちは、みんなで山へのぼっていって、お月さまをつかまえてこようと相談しました。
 ところが、みんなが山の上までいってみると、なんとお月さまは、もう山の上にはいないのです。
 高い空を走っていって、ずっと南のほうヘいってしまっているではありませんか。
 どんなに腕のながいものでも、そこまではとてもとどきそうもありません。
 けれどもみんなは、お月さまをつかまえずに村へ帰るなんて、はずかしいことだと思いました。
 そこでなんとかお月さまをつかまえようと、大いそぎで、こんどはもっと高い山にむかいました。
 みんなが山のいただきからおりてくると、それにつれてお月さまも、だんだん南の山のまんなかあたりまでおりてきました。
 このようすだと、こんどはうまくいきそうです。
 みんなは大喜びで、むこうの山めがけて力のかぎり走っていきました。
 ところが、その山のいただきまでいってみると、お月さまはまたまた、むこうへいってしまっているではありませんか。
 みんなは、お月さまがこわがっているのだと思いました。
 そこで、山から山ヘとよじのぼっては、できるだけやさしそうなあまい声をだして、
  ♪お月さま、お月さま。
  ♪わたしのポケットの中へいらっしゃい。
  ♪あなたに、おいしいバターパンをあげますよ。
  と、口ぐちにさけびました。
 けれどもお月さまは、バターパンをもらいに、ポケットの中へはいってはきませんでした。
 どんどんじぶんの道をすすんでいって、ほかの人をもてらしつづけました。
 いっぽう、村の人たちは死んだようにグッタリとつかれきって、家に帰ってきました。
   お月さまをつれてこなかったことは、いうまでもありません。
おしまい