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1月4日の世界の昔話
  
  
  
  とおせんぼう
イギリスの昔話 → イギリスの国情報
 むかしむかし、イギリスのゴタムという村に、すこしかわった人たちがすんでいました。
 ある日、はしの上で二人の男がバッタリ出あいました。
  「こんにちは。どこへ出かけるのかね?」
  と、一人がたずねると、
  「このさきの村に、ヒツジを十頭、かいにいくのだよ」
  と、あいての男がこたえました。
  「ふうん、ヒツジをかって、かえりはどこの道をとおるの?」
  「もちろん、この道さ」
 すると男は、きゅうにおこったようにいいました。
  「では、このはしをとおるのだな。それはダメだ。このはしにヒツジをつれてこられては、おれがとおるじゃまになる。そんなことはゆるさないぞ!」
  「なに! このはしはおまえだけのものではない。おれはきっと、ヒツジをつれてとおってやる!」
  「いや、とおらせるものか!」
  「とおってみせる!」
  「やかましい! しずかにしろ! おまえがそんな大声でどなったら、おれのヒツジたちがビックリして、はしの手すりをとびこえて川へおっこちてしまうぞ!」
  「そんなこと、しったことじゃない!」
  「バカいえ、おれのだいじなヒツジだぞ!」
  「なんといったって、ここはわたらせない!」
  「いいや! わたってみせる!」
 いいあらそっているところへ、ほかの村の人がやってきました。
  「おいおい、おまえさんたち。なぜけんかをしているんだい?」
  「うん? ああ、おれのヒツジたちを、とおさないというからだよ」
  と、一人がけんかのわけをはなしますと、
  「ふうん。それで、そのヒツジはいったいどこにいるんだい?」
  「へっ? ・・・」
  「あっ、・・・」
 二人の男は、ヒツジがまだそこにはいないことにきがつきました。
   バカバカしくなった二人は、そのままはしをわたって、どこかへいってしまいました。
おしまい