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第 60話

生き返った息子
イラスト Gemini Ai イラストクリックで大イラスト表示

生き返った息子
百物語

 むかしむかし、ある長者の息子が病気で亡くなりました。
 息子の為に立派な葬式を出した長者が、息子のお墓に手を合わせたその時です。
「ううっ、ううっー」
 お墓の中から、人の声が聞こえてきたのです。
「まっ、まさか!」
 みんなは慌てて、息子のお墓を掘り返しました。
 そして掘り出した棺桶を開けてみると、何と死んだはずの息子が息をしていたのです。
「息子が生き返った!」
 長者は大喜びで、息子を屋敷に連れて帰りました。

 次の朝、目を覚ました息子が長者に言いました。
「ここは、どこですか? あなたは、長者様ですか? 長者様、どうかわたしを家に帰してください」
 長者は息子の言葉にびっくりしましたが、息子を優しく抱きしめると言いました。
「お前は生き返ったばかりで、頭が混乱しているのだ。心配せずとも、そのうちに思い出すだろう」
「いいえ、長者様。わたしはこの家の息子ではありません。近くの村の者です」
「何を馬鹿な。お前の顔や姿は、確かにわしの息子だ。お前が葬式の後に生き返った事を大勢の者が見ている」
「でも本当に、わたしはこの家の息子ではありません」
「いいや、お前はわしの息子だ。ただ、混乱しているだけだ」
 でも長者は念の為に、息子が言っていた村に使いをやって調べてみました。
 するとちょうど長者の息子が亡くなった日に、息子を亡くなった家があったのです。
 長者はその息子を亡くした家の主人に、自分の息子に会って欲しいと伝えました。
 その家の主人が長者の息子を自分の息子ではないと言えば、息子が本当の記憶を取り戻すと思ったからです。
「分かりました。長者様の息子とやらにお会いしてみましょう。でもわたしは息子を火葬にしたので、万に一つも生き返る事はないと思いますが」
 そう言って息子を亡くした家の主人が、長者の屋敷へとやって来ました。
 そして主人は、息子の顔を見るなり言いました。
「長者様、やはりわたしの息子ではありません。わたしの息子とは、全くの別人です」
 ところが息子の方は、主人を見ると目に涙を浮かべて言いました。
「お父さん! 何を言っているのですか。早くわたしを家に連れて帰ってください」
「いいえ、わたしはあなたの父親ではありません。わたしの死んだ息子とは、顔も声も違います」
「でも本当に、わたしはお父さんの息子です」
 そう言って息子は、両親の名前から家の様子、子供の頃の思い出などを詳しく話しました。
 息子の話は、全てが当たっていました。
 そのやりとりを聞いていた、長者の父親が言いました。
「どうやらわしの孫と、この人の息子さんが入れ替わったようだな」
「入れ替わった?」
「そうじゃ。火葬にされた息子さんは、何かの形で魂が生き返ったのじゃ。でも火葬にされたので、生き返る体がない。そこで同じ日に死んだわしの孫の体で生き返ったのだ。だから、息子の体はわしの孫で、魂はこの人の息子さんという事になる」
「そうだったのか」
 長者も主人も納得しました。
 そこで両方の家で相談をした結果、息子が帰りたい家に帰るのが一番という事になり、息子の望み通り、息子は主人の家に帰る事になりました。
 そしてそれから両方の家は親戚の様に付き合い、息子も長者の屋敷へ遊びに来る様になりました。

 しかし二年後、息子は再び死んでしまい、もう二度と生き返る事はありませんでした。

おしまい

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