福娘童話集
 


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第111話
狸と山伏
イラスト 「愛舞夢」 イラストクリックで大イラスト表示

狸と山伏

秋田の民話

狸と山伏

 田舎の道を、一人の山伏が歩いていました。
 山伏は、法螺貝を腰にさげていました。時刻はお昼をちょっとすぎたばかりで、お日様は頭の上でカンカン照っていました。

狸と山伏

 山伏がしばらく歩いていくと、道端の大きな木の根元で、タヌキが気持ちよさそうに昼寝をしていました。

狸と山伏

「やあ、こりゃあ、大した古狸だ。一つびっくりさせてやろう。」
 山伏はそーっと眠っている狸に近づきました。
 そして法螺貝を口に当てると、タヌキの耳のそばにもっていきました。

狸と山伏

 山伏は思い切り深く息を吸い込んで、法螺貝を吹きました。
 ぶおおおーっ!
 狸はびっくり仰天。飛び上がって目を覚ましました。

狸と山伏

「わっはははは。どうだ、驚いたろ、タヌ公!」
 狸は、「よーし、今に見てろ。」というような顔をして、後を振り返り振り返り逃げていきました。

狸と山伏

 山伏はのんびり歩いていきました。
 そのうち、辺りの様子が何やらおかしくなってきました。お日様が陰ってきたのです。
「おや、今日は、またどういうわけか、日が暮れるのが早いなあ。これは少しばかり急いで行かねばならん。」
 いつの間にか日はとっぷりと暮れました。

狸と山伏

狸と山伏

 山伏が暗くなった道を歩いていくと、向こうから、ちんちんと鐘を鳴らしながら、葬式の行列がやってきました。
「あちゃー、葬式とは困ったものにぶつかった・・。」
 道は一筋で、横道へ入るわけにはいきません。そこで山伏は、今来た道を引き返すことにしました。

狸と山伏

 ところが、後ろからやってくる葬式の行列の早いこと、早いこと、みるみる山伏に近づいてきました。
「こりゃたまらん!」

狸と山伏

 夢中になってかけていくうちに、道端に1本の大きな松の木がありました。
「やれ、ありがたい。」
 山伏は、大急ぎで松の木によじ登って、行列が通り過ぎるのを待っていました。

狸と山伏

 ところが、葬式の行列は、松の木の下まで来ると、ぴたりと止まって、担いできた棺桶を木の根元に卸していました。
「ひゃあっ!なんでここなのよ!?」と様子を見ていると、お坊さんが長々とお経を読み始めました。
 お経が済むと、今度は、一人ずつ棺桶の前に進み出て、焼香です。

狸と山伏

狸と山伏

 やっと焼香が終わると、みんなは、松の木の根元に穴を掘り始めました。
「げっ!あそこに棺桶を埋めるつもりか?」
 棺桶を穴に埋めてしまうと、人々は、一人二人と帰って行ってとうとう誰もいなくなってしまいました。

狸と山伏

 辺りはシーンと静かになりました。ろうそくの火だけが、暗い中でチロチロと気味悪く燃えています。
「ここから早く去らないと!」
 山伏は松の木から急いで降りようとしましたが、足が震えて言うことを聞きません。

狸と山伏

 その時、松の木の根元の今しがた棺桶を埋めたあたりで、ムクムク埋めたところが動き出したかと思うと・・・・、棺桶の蓋をそろそろ持ち上げて、白い骨のようにやせこけた青白いものが這い出してきました。
 木の上の山伏は肝をつぶしました。

狸と山伏

 白いものは、だんだんと山伏に近づいて、とうとう山伏のいる木のところまで来ました。白いものは、またスーッと手を伸ばし、木に登り始めました。

狸と山伏

 山伏は、夢中で次の枝に登りました。
 登っても、登ってもすぐ後からついてきて、スーッと足元に手を伸ばしていきます。
 山伏はとうとう松の木のてっぺんまで来てしまいました。

狸と山伏

 冷やっと冷たい手が、山伏の足をつかみました。
「助けてくれーっ!」
 震えあがって逃げようとしましたが、ここは松の木のてっぺんです。
 上にも逃げられず、山伏は無我夢中で、腰の法螺貝を取り上げました。

狸と山伏

 そして力の限り、息の限り、
 ぶおおおおおーっ!ぼーっ!
 と吹き鳴らしました。
 突然、辺りが騒がしくなりました。

狸と山伏

「山伏が松の木のてっぺんで法螺貝を吹いとるぞ。」
「こんな昼間に、もの好きな山伏だ。」

狸と山伏

狸と山伏

 松の木の周りには、村の人が集まって、面白そうに山伏を見物していました。

狸と山伏

 それを誰より面白がっていたのは木の後ろに隠れていた狸でした。
 山伏は、さっき脅かした狸にうまく騙されていたのです。

おしまい

※このお話は「愛舞夢」さんからの投稿作品です。

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