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第246話

動物の恩返し

動物の恩返し
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 むかしむかし、この辺りの土地を持っている地主が、森へ散歩に行きました。
 ところがよそ見をしていて、オオカミをつかまえる落とし穴に落ちてしまったのです。
「あいたたたた。・・・おや? 誰か先客がいるのか?」
 地主が腰をさすりながら暗い穴の奥を見てみると、何と奥にはクマとサルとヘビがいたのです。
「うひゃー! だっ、誰か! 誰か早く助けてくれー!」
 地主はあわてて助けを呼びましたが、森の中だったので助けに来てくれる人はいませんでした。

 それから三日後、ようやく近所のお百姓が落とし穴のそばを通りかかりました。
 穴から人の声がするのに気づいたお百姓は、穴の中に呼びかけました。
「おーい、誰かそこにいるのか?」
 すると穴の中から、疲れ果てた返事が返ってきました。
「わしだ、お前の畑の主人だ。
 うっかりして、落とし穴に落ちてしまったんだ。
 すまないが、早く助けておくれ。
 お礼は、たっぷりするから」
 そこでお百姓は持っていたつなに棒にくくりつけて、それを穴の中に下ろしました。
「だんなさま、その棒につかまってください」
 するとつなに、ずしりと重みがかかりました。
「ぐっ、なんて重いんだ」
 そこでお百姓がこんしんの力を込めて引き上げてみると、何と棒にしがみついていたのはクマだったのです。
 穴から出たクマは、お百姓にぺこりと頭を下げると、そのまま森の奥へと逃げていきました。
 そこでお百姓は、もう一度棒をつけたつなを穴の中に下ろしてみました。
 すると次に上がってきたのは、サルでした。
 サルも穴から出ると、お百姓にぺこりと頭を下げて、そのまま森の奥へと逃げていきました。
 そして三度目に穴から出てきたのは、とても大きなヘビです。
 ヘビも穴から出ると、お百姓にぺこりと頭を下げて、そのまま森の奥へと逃げていきました。
「たしかに、だんなさまの声がしたのに、出てくるのは動物ばかりだ。
 これはきっと、悪魔のいたずらに違いない」
 怖くなったお百姓は、その場から逃げ出そうとしました。
 すると穴の中から、またあわれな声が聞こえてきました。
「お願いだ、行かないでくれ。
 どうかもう一度つなを下ろして、わしを助けてくれ。
 助けてくれたら、お前に畑をやろう。
 だからもう一度だけ、つなを下ろしておくれ」
 お百姓は足を止めると、もう一度だけつなを下ろしてみました。
 すると今度こそは、地主が出てきたのです。
「ありがとう、おかげで助かったよ。
 だけどわしは三日も飲まず食わずで、今にも死にそうだ。
 すまないが、お前が持っているお弁当をわしにおくれ。
 このお礼に、家に帰ったら山のような金貨をやるから」
 そこでお百姓は、持っていたお弁当を全て地主にやりました。
 こうして何とか元気を取り戻した地主は、やがて屋敷に帰っていきました。

 次の朝、お百姓は約束のお礼をもらおうと、地主の屋敷へ行ってみました。
 すると地主と一緒に大男の使用人が出てきて、
「お前とは、何も約束をしていない! 早く帰れ!」
と、言って、大男の使用人に命じてお百姓をムチで叩いて追い返したのです。
 お礼をもらうどころや傷だらけになったお百姓は、がっかりしながら家に帰りました。
 そして重い気持ちで家の戸を開けてみると、何と家の中に、あの時のクマとサルとヘビがいたのです。
 お百姓はびっくりしましたが、クマもサルもヘビもニコニコしていて、おそってくるようすはありません。
 まず最初に、クマが言いました。
「助けてくれたお礼に、ウシを持ってきたよ」
 次に、サルが言いました。
「部屋が暖められるように、庭に、たきぎをたくさん積んでおきましたよ。これだけあれば、この冬は大丈夫です」
 最後に、ヘビが言いました。
「わたしは地面にうまっている宝箱を見つけたので、中に入っていた宝石を持ってきました」
 こうして動物たちはお百姓に恩返しをすると、森に帰っていきました。

 お百姓はサルが集めてくれたたきぎで部屋を暖め、クマが持ってきてくれたウシを料理し、ヘビがくれた宝石で上等のワインを買いました。
「だんなさまにはひどい目にあったが、動物たちのおかげで楽しく冬をこせそうだ」
 お百姓が暖かい部屋で肉とワインを楽しんでいると、どこから話しを聞いたのか、お百姓の家に地主がやってきて、お百姓にこう言ったのです。
「貧乏なお前が、こんなぜいたくを出来るはずがない! お前は、わしのところから金を盗んだにちがいない」
 そして地主が役人に言いつけたので、お百姓は牢屋に入れてしまったのです。

 やがてお百姓は、裁判にかけられる事になりました。
 この裁判の裁判官はとても立派な人で、相手が金持ちでも貧しい人でも公平な裁判をしてくれます。
 そこでお百姓は、今までの事を裁判官に正直に話しました。
 まず、地主をオオカミの穴から助けた事。
 地主は、お百姓にお礼をすると約束したのに、使用人を使ってムチで追い返した事。
 それから、ウシやまきや宝石は、助けてあげたクマとサルとヘビがくれた物で、ワインも宝石で買った事。
 それを聞いた裁判官が、お百姓に言いました。
「なるほど、話しはよくわかった。
 正直者なお前が、うそをつくとは思えない。
 お前がそう言うのなら、きっと本当の事だろう。
 しかし、これは裁判だから、お前を助けるには、お前の言葉が本当だと言ってくれる証人や証拠がいるのだよ」
 するとそこへ、あの時のクマとサルとヘビがやって来たのです。
 動物たちはお百姓の言葉が本当であると告げると、その証拠に、クマはウシを、サルはまきを、ヘビは宝石を持ってきたのです。
 証人と証拠がそろったので、裁判官が地主に言いました。
「ここに、お百姓が無罪だと証明する証人と証拠がそろった。わたしはお百姓を無罪とするが、異論はないな」
 さすがの地主も、これには言い返す言葉がありません。
「・・・はい」

 さて、このめずらしい裁判の話が、この国の王さまの耳に届きました。
 そこで王さまは正直者のお百姓を地主にしてやり、約束を破った悪い地主を貧乏なお百姓にしたのです。

おしまい

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