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第206話

人食い鬼の妻

人食い鬼の妻
アラブ首長国連邦の昔話アラブ首長国連邦の情報

 むかしむかし、アラブの国に、ノーマンという若者が住んでいました。
 ノーマンは年頃になったので、ある娘と結婚することにしました。
 でもノーマンは相手の顔を、まだ一度も見たことがありません。
 それというのも、この国では女の人は頭からきれをかぶっていて、めったに顔を人に見せないのです。
 ノーマンは結婚式が終わって、やっと、お嫁さんの顔を見ることが出来ました。
「わあ、すごい美人だ!」
 ノーマンは大喜びです。
 このお嫁さんは、アミネという名前ですが、不思議な事にこのアミネは、ご飯をほとんど食べないのです。
 食べるとしても、細いキリで小さく刻んだ野菜をひとかけら突き刺して、それを一回、口へ運ぶだけです。
「アミネ、もっとたくさんお食べよ」
 ノーマンがいくらすすめても、アミネは食べようとはしません。
「あれだけの食事で、体がもつわけがないのに。何か秘密でもあるのだろうか?」
 ノーマンがアミネの様子を観察していると、ある真夜中、アミネはこっそり家を抜け出しました。
「どこへ行くのだろう? もしかすると、外で何かを食べているのかもしれない。よし、あとをつけてみよう」
 ノーマンがつけているとも知らないで、アミネは歩いて行きます。
 やがてアミネは、墓場へ入って行きました。
 暗くてさびしい墓場を進んでいくと、そこにはアミネが来るのを待っていたものがいます。
「ひ、人食い鬼!」
 ノーマンは、腰を抜かしそうになりました。
 人食い鬼とは、夜中に墓場を荒らして、死んだ人の肉を食べる化け物です。
 アミネは人食い鬼と一緒に新しい墓を掘り起こすと、埋めたばかりの死体を食べはじめました。
 死体の肉を引きちぎり、骨までバリバリと食べます。
 ノーマンは、急いで家へ逃げ帰りました。
 次の朝、いつものようにご飯を食べないアミネに、ノーマンは思い切って言いました。
「なぜ、もっと食べないのだね。お前は、ごはんより墓場の死体の方がいいのかい?」
 それを聞いたアミネは、急に怒り出しました。
「わたしの正体を見たね! このおせっかいめ!」
 そして叫びながら、コップの水をノーマンにかけました。
「ノーマンよ、犬になれ!」
 すると不思議な事に、ノーマンは犬になってしまったのです。
 アミネの正体は、悪い魔法使いだったのです。
 犬にされたノーマンは、アミネにさんざんムチでぶたれながら、一日中働かされました。
 そしてやっとの事でアミネから逃げ出したノーマンは、町のパン屋さんへ逃げ込みました。
 このパン屋さんは大の犬好きで、ノーマンを人間とも知らずに飼ってくれました。
 ある日の事、お客の払ったお金の中に、にせ金がまじっていたのですが、それを見つけたノーマンは、
「わん! わん!」
と、前足でにせ金をたたきました。
「こいつは驚いた。犬に、本物とにせ物の区別がつくなんて」
 この事が評判になって、それからパン屋さんは大繁盛しました。
(これで、助けてもらったご恩返しが出来た)
 ノーマンも喜んでいると、店に一人のおばあさんがやって来ました。
 おばあさんは犬のノーマンを見ると、そっとノーマンに耳うちしました。
「助けてあげるから、あたしに、ついていらっしゃい」
 ノーマンは、びっくりです。
(このおばあさんは、おれが人間だという事を知っているのかな?)
 ノーマンは思い切って、おばあさんのあとについて行くことにしました。
 おばあさんの家では、きれいな娘さんが帰りを待っていました。
 娘はノーマンを一目見ると、
「お前が人間なら、人間にかえれ!」
と、叫んで、コップの水をノーマンにかけました。
 すると、どうでしょう。
 たちまちノーマンは、元の姿に戻ったのです。
 おばあさんが、にこにこしながら言いました。
「やっぱりね。犬にしては利口すぎるから、きっと、魔法で犬にされていると思ったんだよ。それで、だれに魔法をかけられたんだい?」
 ノーマンがわけを話すと、娘が言いました。
「アミネなら知っています。わたしと同じ魔法使いの先生の元で、修行していましたから」
(この娘も、魔法使いだったのか)
と、ノーマンがおどろいていると、おばあさんが言いました。
「大丈夫。うちの娘は、良い魔法使いですよ」
「魔法使いに、良い悪いの区別が、あるのですか?」
「もちろん、ありますとも。人の為になる魔法を使えば、良い魔法使いです。良い魔法使いでなければ、あたしは娘に魔法を使う事は許しません」
 娘がコップに水をくんで来て、ノーマンにわたしていいました。
「アミネを、こらしめましょう」
「はい。ですが、どうすればよいのですか?」
「あなたは家に入って、アミネが帰るのを待つのです。アミネは人間に戻ったあなたを見て驚くでしょう。その時、アミネの心に隙が出来るから、『悪い事をした、罰だ!』と言って、この水をかけなさい。そうすれば、アミネは今までの罪にふさわしい罰を受けるでしょう」
「はい、ありがとうございます」
 ノーマンはコップを持って、家へ帰りました。
 さて、そんな事とは知らないアミネが家に帰って来ると、犬にしたはずのノーマンが人間の姿で立っています。
「あっ、お前は!」
 おどろいて逃げようとするアミネの背中に、ノーマンはコップの水をかけて叫びました。
「悪い事をした、罰だ!」
 するとアミネは、馬になってしまいました。
 悪い魔法を使って人を犬にしたり、死人の肉を食べた罰を受けたのです。
 その後、馬になったアミネは一生を馬として暮らし、ノーマンは助けてくれた良い魔法使いの娘を妻にして、一生幸せに暮らしたのでした。

おしまい

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