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      第202話 
         
          
         
地主と下男 
ロシアの昔話(クルイロフ童話) → ロシアの情報 
       むかしむかし、年を取った欲張りな地主が、ステバンという下男を連れて森の中を歩いていました。 
 するといきなり、 
「ガオォォォーー!」 
と、大きなクマが現れて、前を歩いていた地主に襲い掛かったのです。 
 クマは地主を引きずり回してから太い足で踏みつけると、動けない地主にポタポタとよだれをたらしながら、 
(久しぶりの人間だ。さあ、どこから食べてやろうか) 
と、舌なめずりをはじめました。 
 地主は生きた心地も無く、必死に声をふりしぼって、 
「ステバンや。いとしい、ステバンや。はやく何とかしておくれ」 
と、助けを求めました。 
 すると、木の後ろでブルブルと震えていたステバンは、何とか勇気を出して立ちあがりました。 
 そしてステバンは、そっとクマの後ろに忍び寄ると、持っていたオノを振り上げて、力いっぱいクマの頭めがけて振り下ろしました。 
 するとオノは見事に命中して、クマは、 
「ウォーン!」 
と、一声あげて倒れました。 
 そしてステバンは、さらにオノを振り上げると、無我夢中で何度も何度も、クマの体にオノを振り下ろしました。 
 こうしてステバンが勇気を出してクマをやっつけたお陰で、何とか命拾いをした地主は、 
「やれ、やれ。助かった」 
と、立ち上がってステバンが倒したクマを見るなり、命の恩人のステバンに対して、怖い顔で怒り出しました。 
「こ、この馬鹿者! お前は何て大馬鹿者なんだ!」 
 助けた地主から、いきなり怒鳴られたステバンはびっくりです。 
「だんなさま。一体、何を怒っているのですか?」 
 すると地主は、全身に傷を負って倒れているクマを指差して言いました。 
「見てみろ! お前は、後先も考えずにクマをやっつけやがって! お陰でせっかくの毛皮が台無しじゃないか!」 
 
 人は、困っている時は必死で助けを求めますが、それが解決すると、困っていた時の事も、助けてくれた感謝の気持ちも、忘れてしまうものです。 
      おしまい 
         
         
          
          
       
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