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第179話

鬼子母神

鬼子母神
インドの昔話インドの情報

 むかしむかし、インドのある町で赤ん坊がさらわれました。
「わたしの可愛い坊や! 坊やは、どこ!」
 母親の叫び声を聞いた町の人たちが、顔を見合わせて言いました。
「また、子どもがさらわれたのか?」
「きっと今度も、カリテイモ女王の仕業に違いない」
 子どもをさらわれた母親は、お城へ走って行くと門番に泣きながら訴えました。
「わたしの大事な子どもを返して下さい!
 あの子がいなければ、わたしは生きていけません。
 お願いです。
 どうか子どもを返して下さい!」
 しかし門番は、その母親を蹴り飛ばして言いました。
「黙れ! ここは、女王さまのお城だぞ。さっさと消えうせろ!」
「ああっ、わたしの坊や。可愛い坊や・・・」
 母親が地面に倒れたまま泣き崩れていると、そこへ六人のお供を従えた男の人が通りかかりました。
「これ、何をそんなに、悲しんでいるのですか?」
 母親は顔を上げると、その男の人に言いました。
「はい、実はこのお城のカリテイモ女王さまは、赤ちゃんの肉が大好物なのでございます。
 女王は町の子どもを次々とさらっては、食べてしまわれます。
 今日は、わたしの坊やをさらっていきました。
  はやく坊やを助けないと、坊やは女王に食べられてしまいます」
「なんと、それはひどい話だ」
 話を聞いた男の人が驚いていると、お供の一人が言いました。
「ブッダさま。どうか、この気の毒な女の人を助けてあげる事は出来ませんか?」
 それを聞いた母親は、驚いた顔で男の人を見上げました。
「ブッダさま? あなたさまは、あのお釈迦さまですか?!」
 ブッダと呼ばれた男の人は母親ににっこり微笑むと、弟子の一人に何かを指示しました。
 指示を受けた弟子は、すぐにその場を去りました。

 ブッダとは仏教で最高の位を持つお坊さんの事で、日本ではお釈迦さまと呼ばれています。
 お釈迦さまはさとりを開いて、人々に仏教を教え解いてまわる旅の途中だったのです。

 お釈迦さまが、母親に言いました。
「後の事は、わたしが何とかしましょう。あなたは家で、坊やの帰りを待っていなさい」
「はい、どうぞお願いいたします」
 母親はお釈迦さまに手を合わせると、自分の家へ帰って行きました。
 そして家の前で、さらわれた赤ん坊がすやすやと眠っているのを見つけたのです。
「坊や! わたしの坊や! ああ、お釈迦さま! ありがとうございます」
 母親は何度も赤ちゃんに頬ずりをすると、お釈迦さまに深く感謝をしました。

 さてその頃、お城では大騒ぎになっていました。
 カリテイモ女王の末の子どもが、お城からいなくなってしまったからです。
「わたしの子どもが一人いない! 誰か、わたしの子どもを見つけてきて!」
 カリテイモ女王は泣き叫びながら、お城の中を探し回りました。
 家来たちも一緒に探しますが、しかしどうしてもカリテイモ女王の末の子どもが見つかりません。
 そこでカリテイモ女王は、ちょうどこの国に来ているお釈迦さまに相談をする事にしました。
「ブッダさま。お願いがあって参りました」
「これは女王。一体わたしに何のご用ですかな?」
「はい。
 ブッダさまは、たいそう知恵のあるお方だと聞いています。
 どうかそのお知恵で、わたしの大切な子どもを探してください」
 カリテイモ女王は泣きながらお釈迦さまに頼みましたが、お釈迦さまは不思議そうな顔で言いました。
「あなたには、たくさんの子どもがいると聞いています。
 その数は、五百とも千とも。
 それだけ多くの子どもがいるのなら、たった一人ぐらい、いなくなってもよろしいではありませんか?」
 するとカリテイモ女王は、とんでもないと言う顔で言いました。
「ブッダさま! 何をおっしゃいます! 子どもというものは何人いても可愛く、そして大切な存在です!!」
「ほほう、あなたの様にたくさんの子どもがいても、子どもが一人でもいなくなれば大変というわけですな」
「当たり前です! それが母親というものです!」
「なるほど。それではたった一人しかいない子どもをさらわれた母親は、どんなに嘆き悲しむ事でしょうね。
 聞いた話では、あなたは赤ん坊の肉が大好物で、人の子をさらっては食べていると言うではありませんか」
「そっ、それは・・・」
「実はあなたの子どもは、わたしの弟子が預かっています。
 あなたが改心をするのなら、子どもを無事にお返ししましょう。
 ですが、あなたがこれからも人の子をさらって食べると言うのなら、わたしはあなたが人の子をさらう度に、あなたの子を一人ずつさらう事にします」
「・・・・・・」
  お釈迦さまの言葉に女王はぼろぼろと涙をこぼすと、地面に手をついて謝りました。
「ブッダさま。どうかお許しください。わたしが間違っておりました。もう決して人の子をさらって食べる様な事はいたしません」
「・・・うむ、よくわかってくだされた」

 お釈迦さまにさとされたカリテイモ女王は自分のした事を心から後悔すると、もう二度と子どもをさらう様な事はしませんでした。
 その後、カリテイモ女王はお釈迦さまの弟子となり、鬼子母神という子どもを守る神さまになったのです。

おしまい

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