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第130話

亡霊と食事をした墓堀

亡霊と食事をした墓堀
ドイツの昔話ドイツの情報

 むかしむかし、ある町の墓堀が、鼻歌交じりにお墓の穴を掘っていました。
 ザクッ、ザクッ。
 ザクッ、ザクッ。
「さあ。もう少しだぞ」
 男は力いっぱい、シャベルで足元の土をくずしました。
 すると土の中から、真っ白な人の骸骨が出てきました。
 男はシャベルで骸骨を突っつきながら、冗談のつもりで話しかけました。
「やあ、どうだい。今夜はおれの家へ来て、一緒に食事でもしないか?」
 すると驚いたことに、骸骨がしわがれ声を出して、返事をしたのです。
「ああ、それはいいな。では、何時に行こうか?」
「ひぇっ! しゃ、しゃべった?」
 墓堀はびっくりして、つい、
「ひっ、七時だ」
と、答えてしまいました。
「いいとも。七時にまた会おう」
 仕事が終わった墓堀は、家に帰る途中で心配になってきました。
「死んだ人間を食事に呼ぶなんて、とんでもない約束をしたもんだ。でも、今さら断るわけにもいかないし、一体どうしたら。・・・そうだ。教会に行って、どうしたらいいか牧師さんに相談してみよう」
 そして牧師さんに会うと、男は骸骨の事をくわしく話しました。
 話を聞いた牧師さんは、こう答えました。
「そうですか。では帰ったらまず、夕ご飯の支度をしなさい。そして、神さまのおめぐみを書いた、ありがたい本を読んでいるように」
 夕方、家へ帰って来ると、男は牧師さんに言われた通り、夕ご飯の支度をして本を開いていました。
 やがて、七時になりました。
 コンコンコン
 入り口の戸をたたく音がします。
「とうとう、やって来たな」
 戸を開けると、外には髪の毛を長くたらした、やせた男が立っていました。
 墓堀の男は怖くてブルブル震えながらも、やせた男をテーブルに案内しました。
「さあ。遠慮なく食べてくれ」
 お客はだまったまま食事を食べ終わると、ていねいにお礼を言いました。
「結構な食事をありがとう。さて、今度はわたしがごちそうをする番だ。明日の夜七時、家に来るように。ああ、わたしの家は、昼間、お前さんと会った墓のすぐ近くさ。あの墓の所に立っていてくれれば、迎えに来るからな」
 墓堀の男は、ますます恐ろしくなって、
「あの、明日の晩は、その、都合が悪くて、だから、行かれそうもないんだけど」
と、一生懸命に断ろうとしましたが、
「いいな! 明日の夜七時だ!」
と、承知してくれません。
 そしてとうとう、墓堀の男は、食事に行く事を承知してしまいました。
 その夜、男は怖くて怖くて、一晩中、眠ることが出来ません。
「そうだ。朝になったら、もう一度、牧師さんに相談してみよう」
 話を聞いた牧師さんは、しばらく考えてから、こう言いました。
「招待を受けてしまったのだから、約束通り墓場に出かけなさい。お前が向こうへ着く前に、わたしは死んだ亡霊の為に、お祈りをささげておこう。なに、心配はいらないよ。わたしに任せておきなさい」
 それを聞いて男は、やっと安心しました。
 さて、夜になりました。
 男は約束通り、墓場にやってきました。
 ありがたい事に、今夜は月が出ていたので、墓場が月明かりで明るく見えます
 墓石の間を歩いて行くと、すぐに、昨日骸骨を見つけた墓のそばに出ました。
 その時、どこかで七時の鐘が鳴りました。
 するといきなり、
「やあ。よく来てくれたな」
と、いう、あのしわがれ声がしました。
 ふりむくと、すぐそばに昨日のやせた男が、すっと立っていました。
「では、家へ案内しよう」
 やせた男について行くと、くずれかかった石壁と木の扉が見えました。
「この向こうが、わたしたち亡霊の家だ」
 ギイッ
 亡霊が扉を開ける、中は、がらんとした部屋です。
 その部屋を通って次の部屋に出ると、一人の女の人が大きなテーブルの上に、見事な皿やグラスなどを並べていました。
「おや。まだ、支度が出来ていないようだな。しばらくの間、窓から庭でもながめていてくれないか」
 墓堀の男は、亡霊に言われた通り外を見ていました。
 すると、窓のそばに立っているオリーブの木から、一枚の葉っぱがヒラヒラと落ちました。
 しばらくすると、亡霊がやってきました。
「すまないが、まだ夕飯が出来ないので、もう少しそこにいて、庭をながめていてくれ」
「おやすいご用です」
 墓堀の男は答えました。
 するとまた、オリーブの木から、一枚の葉っぱが落ちました。
 まもなくテーブルの上には、立派なごちそうがずらりと並びました。
 そこで墓堀の男は、亡霊と二人で食事をはじめました。
 墓堀の男は、怖くて怖くて、どんなご馳走を食べても味が分かりません。
 そして食事が終わろうとする時、オリーブの木から、もう一枚の葉っぱが落ちました。
 ごちそうを食べ終わった墓堀の男は、
「素晴らしい食事を、どうもありがとう」
と、お礼を言いました。
 そして、亡霊と一緒に入り口まで来ました。
 ギイッ
 亡霊が、扉を開けてくれました。
 外に出た墓堀の男は、まぶしいお日さまの光にびっくりです。
「おかしいぞ。たしか今は、夜のはずなのに」
 不思議に思いながらも、男は墓場を抜けて町に出ました。
 ところが町の様子が、夕飯を食べに行く前とは、すっかりかわっているのです。
 見たこともないような建物が建っており、形の変わった服を着た人たちが、ぞろぞろ歩いていました。
「一体、ここはどこなんだろう? そうだ、教会へ行って牧師さんに会えば、何かわかるかも知れない」
 ところが教会に来てみると、教会の建物も、前とは違っていたのです。
 牧師さんは、墓堀の男のぜんぜん知らない人でした。
 とりあえず墓堀の男は、
「亡霊の家へ夕ご飯をよばれて、たった今、帰って来たところだ」
と、話しました。
 すると牧師さんははっとして、男の顔を見つめました。
 教会の古い記録の中に出てくる、不思議な男の話を思い出したのです。
 その男は三百年も前に、墓場から姿を消したきり、二度とこの世に現れなかったと書き残されていたのです。
(三百年前に墓場から消えたのは、この人に違いない)
 牧師さんは、その古い記録を探し出して、男に読んで聞かせました。
 すると、恐ろしい事にが起こりました。
 牧師さんが記録を読んでいるうちに、男の髪の毛がたちまち、まっ白になり、そして残らず抜け落ちてしまったのです。
 そして体は、だんだん小さく縮んでしまい、ついにミイラになるとそのままばったりと倒れて死んでしまいました。
 なんと墓堀の男が亡霊の家ですごした時間は、三百年という長い年月だったのです。

おしまい

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