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第117話

金色の馬

金色の馬
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 むかしむかし、ある村に、三人の兄弟がいました。
 上の二人の兄たちは、いつも一番下の大人しい弟のイワンを馬鹿にしていました。
 ある年の事、兄弟の大切な小麦畑が、何者かに荒らされるようになったのです。
 そこで兄弟は相談をして、交替で畑を見張る事にしたのです。
 ところが、兄たちは二人とも夜中になるとねむってしまって、誰が小麦畑を荒らすのか見つける事が出来ませんでした。
 そして三日目、イワンが見張る番になりました。
 イワンはねむくならないように、お菓子を食べながら小麦畑を見張っていました。
 すると真夜中。
「ややっ。あれは、なんだろう?」
 どこからか一頭の金色の馬が走ってきたのです。
 馬は耳から煙を、鼻から火を吹き出していました。
 やがて金色の馬は、畑を踏み荒らしながら小麦を食べ始めました。
(よし、捕まえてやるぞ)
 イワンは、そっと馬に近づくと、素早く馬の首につなをかけました。
 驚いた馬は暴れましたが、イワンはつなを離しません。
 しばらくすると馬は逃げるのをやめて、イワンに人間の言葉で話しかけました。
「お願いです。どうかわたしを逃がして下さい。いつか、ご恩返しをいたしますから。わたしに用がある時は、広い野原で、『魔法の馬よ、出ておいで』と、呼んで下さい」
「わかった。では逃がしてやるよ」
 イワンは、つなを外して馬を逃がしてやりました。

 さて、それからしばらくしたある日の事、この国の王さまが国中におふれを出しました。
《お城の広場で、馬に乗って高く飛び上がり、塔の上にいる姫の手から指輪を外した者を、姫の婿にする》
 さあ、これを知った国中の男の人が馬に乗って、お城の広場に集まりました。
 もちろん、イワンの二人の兄たちも行きました。
 みんなは塔の上のお姫さまの指輪を取ろうと、一生懸命に馬を飛び上がらせますが、誰も塔の上まで飛び上がれません。
 それを見たイワンは、
(もしかすると、あの金色の馬なら)
と、思い、野原に出て叫びました。
「魔法の馬よ、出ておいで」
 するとすぐ現れた馬は、魔法でイワンの服をきれいな服にかえると、イワンを乗せてお城の広場へ行きました。
 そして塔をめがけて、高く飛びあがりました。
 でも残念な事に、お姫さまの所までは、ほんの少し届きませんでした。

 次の日も、イワンは金色の馬を呼んでお城へいきましたが、またほんの少し、お姫さまには届きませんでした。

 三日目、今度もイワンは金色の馬に乗ってお城の広場へ行くと、
「えいっ!」
と、思いきり、馬の横腹を蹴りました。
 すると馬が高く飛び上がったので、イワンはとうとう、お姫さまの指輪を取る事が出来たのです。
 そして、大騒ぎをしている人たちの間を駆け抜けると、家に戻りました。
 指輪は誰にも見つからないように、大切にしまっておきました。

 それから何日かすると、国中の男の人がお城に呼ばれました。
 そして、お姫さまが一人一人にお酒をついでまわりました。
 やがてお姫さまは、イワンの前に来ました。
 イワンにお酒をつごうとしますが、イワンは両手で何かをしっかりと握っていて、グラスを持とうとしません。
「あら。何をそんなに握っているのですか? 手の中の物見せてくださいな」
 イワンが両手を開くと、そこには、お姫さまの指輪がキラキラと光り輝いていたのです。
「まあ!」
 びっくりしたお姫さまは、イワンににっこり微笑むと、王さまに言いました。
「お父さま。わたしのお婿さんが見つかりましたわ」
 こうしてイワンは金色の馬のおかげで、お姫さまのお婿さんになれたのでした。

おしまい

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