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第116話

若者のヘビ退治

若者のヘビ退治
ボリビアの昔話 → ボリビアについて

 むかしむかし、ボリビアのある山に、とても大きなヘビがいて、次々と人間を食べたのです。
「よーし、おれがヘビをやっつけてやる!」
 ある日、勇気のある若者が、みんなが止めるのも聞かずに、手さげ袋を持って山へ出かけました。
 袋の中には、お昼ご飯のトウモロコシと短刀が入っています。
「さて、そろそろヘビを呼ぼうか。ヘビは、笛を吹くと出てくると言うからな」
♪ピーヒャララン、ピーヒャララン
  若者が山の上で笛を吹いていると、その笛の音色につられてヘビが現れました。
 そして若者が短刀を取り出すひまも与えず、あっという間に若者を飲み込んでしまったのです。
「ありゃ、これはしまった」
 でも若者はあわてずに、ヘビのお腹で手さげ袋を開けると、トウモロコシと短刀を出しました。
「まずは、トウモロコシを食べて腹ごしらえだ」
 若者はトウモロコシを食べて力を付けると、短刀でヘビのお腹の中をあちこち切り付けました。
「うぎゃーー! 痛い、痛い!」
 これには、さすがのヘビもびっくりです。
 それで急いでとなりの山へ行き、友だちのヘビに言いました。
「助けてくれ! お腹が痛くてかなわないんだ!」
 すると、友だちのヘビが尋ねました。
「お前、何を食べたんだ?」
「いつものように、人間を食べただけだよ」
「おかしいな。人間なら、別に毒があるわけでもないし」
 それを聞いて若者は、また短刀でヘビのお腹を突いてまわりました。
「痛い、痛い、もう駄目だ。お前も人間なんか食べるな。食べると、わしみたいにお腹が痛くなるぞ」
 ヘビは、暴れまわりながらさけびました。
 やがて疲れた若者は、お腹の中を短刀で突くのをやめると、すこし昼寝をしました。
「おや? お腹が痛いのがおさまったぞ」
 そこでヘビは、自分の山へ戻っていきました。
 やがて、昼寝から目覚めた若者は起き上がると、
(さて、いよいよヘビをやっつけるか)
と、短刀でヘビの心臓を切り取ってしまいました。
 これにはさすがのヘビも、死んでしまいました。
 若者は短刀でヘビのお腹に穴を開けて外に出てくると、急いで自分の村へ戻っていきました。
 村人たちは、若者がヘビに食べられたと思っていたので、びっくりです。
 そればかりか、若者からヘビをやっつけたと聞いて、飛び上がって喜びました。
「ばんざーい! これからは、ヘビに食べられることはないぞ!」
 この事があってから、となりの山のヘビも、そのほかの山のヘビも、もう二度と人間を食べなくなったそうです。

おしまい

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