|  |  | 福娘童話集 > 江戸小話 > その他の江戸小話 >かじかと、どじょうと、金魚
 第 14話
 
  
 かじかと、どじょうと、金魚
  あるとき、かじかと、どじょうと、金魚が顔をあわせました。「やあ、久しぶりだな。たまには三人して、酒でも飲もうか」
 「うん、そりゃあいい」
 そこで三人は、酒屋ののれんをくぐりました。
 二杯、三杯と飲みすすむうちに、金魚が赤い顔で聞きました。
 「ところで、ここの勘定は、だれが払うんだ?」
 「だれって、金魚どんが払うんじゃ、ねえのか? おら、一文も持ってねえ」
 どじょうがそう言うと、かじかもあわてて言いました。
 「おらも一文なしだ。どうする?」
 「みんな一文なしだとなると、ここは何とかして逃げ出さねばなんねえ。・・・そうだ。こうしたらどうだ?」
 金魚は店のすみで、かじかとどじょうに相談しました。
 「なるほど。よし、その手でいこう」
 相談をまとめると、まずかじかが、
 「あれっ、かじか(→火事か)?」
 と、酒屋を飛び出しました。
 すると、どじょうが、
 「どじょ(→どこ)だ、どじょ(→どこ)だ?」
 と、かじかの後を追って、飛び出しました。
 続いて金魚も、飛び出して、
 「あっ、きんぎょ(→近所)だ、きんぎょ(→近所)だ!」
 と、大きな声で騒ぎました。
 「なにっ、近所が火事だと!」
 酒屋は商売どころではなく、あわてて外へ飛び出していきました。
 かじかと、どじょうと、金魚は、
 「それっ、いまのうちだ」
 と、一目散に、逃げ出したそうです。
 おしまい   
 
 
 |  |  |