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 第 9話
 
  角兵衛獅子の太鼓(かくべえじしのたいこ)   隠居(いんきょ→仕事をやめて、老後を楽しむ人 →詳細)さんのところへ、どろぼうが入りました。目をさました隠居さん。
 そばにねていたこぞうさんをつついて、
 「こぞう、こぞう。どろぼうがきたから、おいだしてやれ」
 いわれたこぞうさんは、こわくなり、あわてて、ふとんをひっかぶると、
 「だんなさま、いまのは、犬でございます」
 それをきいたどろぼう。
 「ワン、ワンワン」
 隠居さんは、そばのこぞうさんをつついて、
 「こぞう、また、音がするぞ」
 と、いえば、こぞうさん、ふとんの中から、
 「あれは、ネコでございます」
 それをきいたどろぼう。
 「ニャーオ」
 隠居さんは、また、こぞうさんをつついて、
 「これ。まだ、音がするぞ」
 「あれは、ししまいでございます」
 すると、それをきいたどろぼう。
 「ピーヒャラ、ピーヒャラ」
 と、ししまいのおはやしを、はじめました。
 こぞうさんは、すっかりうれしくなって、ふとんの中から首を出すと、
 「ねえ、どろぼうさん。今度は、角兵衛獅子の太鼓(かくべえじしのたいこ)を、おたのみします」
 おしまい   
 
 
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