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 第 5話
 
  紛失の師匠  お店のこぞうさんが、主人に用事をたのまれました。「この手紙をな、牛込(うしごめ→東京の新宿)の、後藤平太兵衛(ごとうへいたべえ)さまのところへ、持っていっておくれ。この人は、剣術(けんじゅつ)の師匠(ししょう→先生のこと)だから、そういえばすぐわかるよ」
 「はい」
 こぞうさんは、さっそく出かけましたが、ゆくさきの家がよくわかりません。
 牛込のあたりへつくと、
 「このあたりに、強盗へえったべえさまというおかたはございませんか?」
 と、きいて歩きました。
 きかれた人は、首をかしげ、
 「はて、それはおかしな名だな。場所はどこときいてきたのかな」
 「はい、おしこみとききました」
 「それは、なにをしている人じゃな」
 「はい、たしか、紛失の師匠といったとおもいます」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
   
 
 
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