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 第 3話
 
  水中の小判   大阪の商人が、江戸ヘむかう船にのっておりました。ところが、この商人。
 うっかりして、百両(七百万円ほど)の小判を、海へおとしてしまいました。
 さあ、たいへん。
 百両といえば大金です。
 船は、すぐとまりました。
 とまりはしましたが、さて、どうしたらよいかわかりません。
 船の中は、大さわぎです。
 すると、ひとりの男が、
 「もし、もし。わたしは、長崎のものですが、よい物を船にのせております。いま、出してしんぜましょう」
 と、大きな荷物をほどいて、ビードロ(ガラス)のつぼを、取り出しました。
 このつぼの中へ商人を入れ、長いつなをつけて海の中ヘおろそうというのです。
 さっそく、長いつなをつけて、みんなで、しっかり持ちました。
 「そーれ。しずかに、おろせ」
 つぼは、そろりそろりと、海の中ヘしずんでいきます。
 「どうじゃ?」
 「小判は、見えるか? 見えんか?」
 船の上から、口ぐちに、たずねますと、
 「見えるわ、見えるわ。たしかに、見える」
 海の底から、ヘんじがあがってきました。
 みんなが、ほっとしていますと、海の底から、
 「たしかに、小判が百両、見えておる。だが、取ろうにも、手が出されん」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
   
 
 
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