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第 56話

ごめき浜のおさよ

ごめき浜のおさよ
石川県の民話石川県の情報

 石川県の輪島市に饒石黒髪神社と呼ばれる神社があり、小さなお堂には女の黒髪がまつられています。

 むかし、輪島の貧しい漁村に、重蔵(しげぞう)という若者がいました。
 重蔵はいつか自分の船を作りたいと、お金をためながら船大工の勉強をしていました。

 ある日の事、重蔵は港町で黒髪がとても美しい女に出会いました。
 その女は、『一目干両』といわれるほどの美人です。
 一目千両に一目惚れをした重蔵は、今まで自分の船を作るために貯めていたお金を全部持って一目千両の所へ行きました。
 そして一目千両に、全てのお金を差し出して言いました。
「おら、お前に惚れた。これしかねえが、受けとってくれ」
 いつもは突然やって来た男など相手にしない一目千両ですが、ふと、重蔵のなまりが気になって尋ねました。
「お前さま、国はどこですか?」
「輪島や」
「輪島!」
 一目千両はびっくりしながらも、重蔵に言いました。
「お金などいりません。私の名はおさよ。国は剣地(つるぎじ)です」
 おさよは輪島から少し離れた剣地(つるぎじ)の生まれで、家が貧しいのでこの港町にお金で売られたのです。
 二人は故郷が近い事もあって、すぐに仲良くなりました。

 ある日、重蔵はおさよに言いました。
「今度、長い漁に出る事になった。帰るまで三ヶ月ほどかかる」
「三ヶ月も。そんなに長く」
「ああ。だが、漁に出るのはそれで最後だ。今まで貯めた金と今度の漁の金で、おらは漁師をやめて船大工になる。船大工になれば、お前といつまでも一緒に暮らせるからな」
「私と一緒に?」
「おらと夫婦になろう。必ず幸せにするから、最後の漁の三ヶ月間を待ってくれ」
「はい。・・・うれしい」
 重蔵はおさよと夫婦になる約束をして、最後の漁に出て行きました。
 幸の薄いおさよでしたが、やっと訪れた幸せを信じて三ヶ月間を待ちました。
 でも、重蔵の乗った船は、港に帰ってきませんでした。

 重蔵が漁に出て半年が過ぎた頃、重蔵の乗った船が嵐にあって沈没したとの噂が流れてきました。
「うそ! 重蔵さんが死ぬはずがない! 私と夫婦になるのだから!」
 それからおさよは毎日海に行くと、一つの岩に座って重蔵が帰って来るのを待ち続けました。

 やがておさよは病気になりましたが、雨の日も雪の日も岩に座って重蔵を待ち続けます。
 そして風が強い冬のある日、おさよは冷たい波にさらわれて死んでしまいました。
 おさよが暮していた小屋には、自分と重蔵の二つの茶碗と箸がひっそりと取り残されていました。

 さて、それからこの浜では、不思議な事が起こりました。
 おさよが座っていた岩の近くを歩くと、砂がすすり泣く様な音を立てます。
 おさよが座っていた岩の近くを通る船は、不思議な事に岩へと吸い寄せられてしまいます。
 また、おさよが座っていた岩の上から船に向かって、手招きをする女の幽霊が現れる事もありました。
「一目千両は、まだ成仏出来ないのだな」
 村人は海が見えない山の中に社を作ると、おさよの黒髪をまつりました。
 海が見える場所だと、おさよの未練が消えないと思ったからです。
 やがてその社は、黒髪神社と呼ばれました。

 さらにそれから数年後、何と船が沈んで死んだと思われていた重蔵が帰ってきたのです。
 船が沈んで離れ小島に流れ着いた重蔵は、時間はかかったもののおさよの元へ帰ってきたのでした。
 おさよが死んだ事を知った重蔵は、おさよが自分を待ち続けた岩に行くと、おさよの名前を呼びながら泣き続けました。
「おらが、おらがもっと早く帰っていれば・・・」
 この村では泣くことを、『ごめき』と言います。
 重蔵があまりにも悲しそうに泣くので、この浜は『ごめき浜』と呼ばれる様になりました。
 その後、何日も何日も泣き続けた重蔵は、どこかへと姿を消してしまいました。

おしまい

→ 饒石黒髪神社|石川県神社庁

おしまい

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