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第 14話

鬼が悪さをするわけ

鬼が悪さをするわけ

 むかしむかし、ある山に、鬼たちが住んでいました。
 この鬼たちは頭に鋭い二本の角を生やし、とても恐いまっ赤な顔をしていましたが、これといって人間に悪さをするわけでもなく、とても平和で大人しく暮らしていました。

 ある日の事、鬼の親分が人間の娘に一目惚れをして、自分のお嫁さんにしたいと思いました。
 そこで鬼の親分は毎日毎日、金銀財宝を手土産に娘の家へ通いましたが、娘の父親は手土産を受け取るだけ受け取って、なかなか娘をやろうとは言いません。
 こうして百日が過ぎ、娘の父親は村一番の大金持ちになりました。
 しかし父親は相変わらず手土産だけを受け取って、鬼の親分を追い返してしまうのです。
 これにはさすがに鬼の親分も腹を立てて、娘を桶に入れて山へと連れて帰りました。

 さあ、父親から話を聞いた村人たちは、とても怒りました。
「鬼なんかに、村の娘をとられてなるものか!」
「そうだ、そうだ。みんなで、鬼をやっつけてしまえ!」
 こうして村人たちは手にカマやクワを持って、鬼の住む山へと行きました。
 そして鬼の住み家を見つけると、
「わーっ!」
と、叫びながら鬼たちに襲いかかったのです。
 戦う事を知らない平和な鬼たちは突然襲ってきた人間たちにびっくりすると、娘の入った桶を残して逃げてしまいました。
 このすきに村人たちは娘を助け出すと、桶に娘の重さ分だけ石をつめて、娘の着物をかぶせてふたをしました。
 また、鬼の宝物を根こそぎ奪っていったのです。

 さて、しばらくして鬼たちがおそるおそる戻ってみると、残してきた桶の中から娘の着物が見えていました。
「何だ? 人間たちは、娘を取り返しに来たのではなかったのか?」
 鬼の親分は不思議に思いながらも、大好きな娘がいるはずの桶に駆け寄りました。
「大丈夫か? 怪我はないか?」
 心配しながら桶のふたを開けてみると、中には着物と石ころしか入っていません。
 それを見た鬼の親分は、ひどく怒りました。
「人間とは、何とひどい事をする生き物なのだ!
 宝を奪うだけならまだしも、自分の娘を石に変えてしまうなんて!
 悪い人間など、こらしめてやる!」

 それからだそうです、鬼が人間に悪さをするようになったのは。

おしまい

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