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福娘童話集 > きょうの百物語 > その他の百物語 > とっつくひっつく 
      第 1話 
         
          
         
とっつくひっつく 
      
       むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。 
 ある日、おじいさんはとおくの畑へいったのに、大事な弁当をわすれてしまいました。 
 そこで、おばあさんが後から弁当を持って出かけていくと、とちゅうのくらい森で、 
「とっつくぞう〜、ひっつくぞう〜」 
と、おそろしい声がきこえてきました。 
 おそろしくなって、かけだしたおばあさんは、ようやくおじいさんの畑にたどりつくと、そのことを話しました。 
「帰りもおなじところを、とおらないといけないし、こまったことじゃ」 
 おばあさんがいうと、 
「その声がしたら、『とっつくなら、とっつけ。ひっつくなら、ひっつけ』と、いってみたらどうじゃ」 
 おじいさんがいったので、おばあさんもしょうちして、かえっていきました。 
 するとやっぱり、 
「とっつくぞう〜、ひっつくぞう〜」 
と、おそろしい声。 
「とっつくなら、とっつけ! ひっつくなら、ひっつけ!」 
 おばあさんがおもいきってさけぶと、どこからともなく小判がとんできて、ピタピタとからだにひっつきました。 
 おばあさんがこしをぬかしていると、心配したおじいさんがかけつけてきました。 
 二人はおばあさんにひっついた小判のおかげで、たいしたお金持ちになりました。 
 すると、となりのよくばりばあさんが、 
「どうして、こんな金持ちになったか、教えろやい!」 
と、やってきたので、ありのままに教えると、さっそく次の日に、おなじことをまねしてみました。 
 ばあさんはじいさんに、わざと弁当をわすれさせて、とおくの畑へいかせました。 
 そして、じいさんのところへ弁当を持っていくと、そのかえりにやっぱり、 
「とっつくぞう〜、ひっつくぞう〜」 
 へんな声が、きこえてきました。 
 ばあさんがよろこんで、 
「とっつくなら、とっつけ。ひっつくなら、ひっつけ。うんとひっつけ」 
と、さけぶと、松ヤニのかたまりが、どこからともなくとんできて、からだじゅうがベタベタです。 
「小判をかついでかえろう」 
 たのしみにやってきたじいさんも、松ヤニを小判とまちがえて、ばあさんにさわったものですから、二人はくっついたきりはなれなくて、どうにもこうにもこまったそうです。 
      おしまい 
         
       
        
 
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