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2016年11月 7日の新作昔話

たまご長者

たまご長者

日本昔話

 むかしむかし、ある村に、とても親切なおじいさんがいました。
 ある寒い日の事、おじいさんが仕事から帰ってくると、家の前にボロボロの着物を着た男が立っていました。
 男は寒さにブルブルと震え、今にも倒れそうです。
「お前さん、こんな所にいては体が凍えてしまうよ。さあ、遠慮せずに中に入りなさい」
 おじいさんは男を家に入れてやるといろりに火をおこし、とっておきのお酒を出してやりました。
「身体が冷えた時は、お酒が一番です」
 お酒を一口飲んだ男は、涙を流して喜びました。
「ああ、おいしい。まるで生き返ったようです。ありがとうございます。ありがとうございます」
 それからおじいさんは男に自分の分の晩ご飯を食べさせてやり、自分の布団に男を寝かせてあげました。

 次の朝、男はおじいさんをお礼を言うと、ふところからたまごを取り出して言いました。
「あなたは優しい人だ。お礼に、このたまごをあげましょう。何か困った事があったら、このたまごを転がしてください。このたまごが、あなたを助けてくれるでしょう」
 男はそう言うと、どこかへ行ってしまいました。

 それからしばらくしたある日、親切なおじいさんは悪い人にだまされて、家も畑も全て取られてしまったのです。
「さて、これからどこに行けばよいのやら」
 家を追われたおじいさんは、ふと、ふところに入れたたまごの事を思い出しました。
「そうだ。困った事があったら、このたまごを転がせと言われていたな」
 おじいさんは峠を登ると、たまごを転がしてみました。
 するとたまごはコロコロ転がって、おじいさんが住んでいた家にぶつかって割れました。
 そして割れたたまごがブルブルと震え、中から小判がザクザクと飛び出したのです。
 そこでおじいさんはその小判で、自分の家や畑を買い戻しました。
「ありがたい。これで家も畑も元通りだ」
 おじいさんが割れたたまごに手を合わせてお礼を言うと、割れたたまごがまたブルブルと震えて、さっきよりもたくさんの小判と、小さな小さな小人の大工達が次々と飛び出してきて、おじいさんの家を立派な屋敷に建て替えてくれたのです。

 こうして大金持ちになったおじいさんは、それからも困っている人がいると親切にしてやり、人々からたまご長者と呼ばれるようになりました。

おしまい

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