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2015年12月28日の新作昔話

元旦長者

元旦長者
岩手県の民話岩手県の情報

 むかしむかし、あるところに、とても貧乏なおじいさんとおばあさんが住んでいました。

 ある大晦日(おおみそか)の事、おじいさんはおばあさんに尋ねました。
「この一年間、汗水たらしながら頑張って働いてきたが、お金はどのくらい貯まったんだ?」
 するとおばあさんは、床下に隠してあった、お金の入っているつぼを取り出して数え始めました。
「おじいさん。三百文ばかりありますよ」
「そうか。あまり贅沢は出来んが、それで正月の用意を買うとするか」
 おじいさんはお金を受け取ると、町まで続く雪道を歩いていきました。
 その途中に地蔵堂があったのですが、雪の重みでお堂が壊れてしまって、中のお地蔵さまが雪に埋まっていたのです。
「ああっ、これはもったいないことだ」
 おじいさんは雪の中からお地蔵さまを掘り出すと、周りの雪かきをしてやりました。
 しかし、雪はどんどん降ってくるので、このままではお地蔵さまはまた雪に埋もれてしまいます。
「困った。わしには、壊れたお堂を直す事は出来んし・・・。おおっ、そうじゃ」
 そこでおじいさんは急いで町にやってくると、有り金全部で赤いずきんをいくつも買いました。
 そして、再びお地蔵さまのところへ戻ってくると、
「地蔵さま。せめて、これでがまんしてください」
と、お地蔵さまに買ってきた赤いずきんをかぶせはじめたのです。
 でも、お地蔵さまの数が多くて、ずきんが一つ足りなくなったのです。
 そこでおじいさんは、自分がかぶっていた笠と蓑を脱ぐと、最後のお地蔵さまに着せてやりました。
「ああ、これでいい」
 そしておじいさんは手ぶらのまま、雪まみれで家に帰ったのでした。
「あら、おじいさん、お帰りなさい。どうしました、雪まみれで」
 おじいさんは、おばあさんに今日の事を話してやりました。
「実は、これこれ、そういうわけなんだ。正月に何も買ってやれなくてすまなかったな」
 するとおばあさんは、にっこりと笑って言いました。
「それは良い事をしましたね。なあに、お正月の間、何も食べなくても死にはしませんよ」
 そこで二人は、空腹のまま眠ることにしました。
 さて、その日の真夜中、どこからか、ごろごろと大木をひく様な音がしました。
 その音に、おじいさんとおばあさんが目を覚ましました。
「おばあさん、あの音は何じゃろう? 正月早々、長者どんの若者たちが、木をひいているのかな?」
「そうですね」
 二人が話し合っていると、その音がだんだん近づいてきました。
 やがて、家の外から誰かが声をかけました。
「じいさま。じいさま。赤いずきんと笠と蓑の礼を持ってきたぞ。ここに置いておくから、朝になったら割ってみろ」
 声はそう言って、どこかへ消えていきました。
 おじいさんが外に出てみると、家の前には一抱えもありそうな大木が置いてあり、遠くにはおじいさんがかぶせた赤いずきんと笠と蓑を着たお地蔵さまが、雪道を帰って行く後ろ姿が見えました。

 翌朝、おじいさんはおばあさんは、お地蔵さまに言われたように、家の前に置かれた大木をオノで割ってみました。
 すると大木の中は空洞で、その中から金銀がざくざくと出てきたのです。
 こうしておじいさんとおばあさんはそのお金でお金持ちになり、人々からは元旦長者と呼ばれて、幸せに暮らしたのです。

おしまい

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